xAI(SpaceXSI)の開発者向けドキュメントによると、2026年10月から、Grok APIのChat CompletionsとResponses APIのリクエストに「guidelines」という配列を加えられるようになりました。各項目は type(常に "policy")、category(nsfw・violence・profanity のどれか)、behavior(今は "decline" のみ)の3つで、指定した分野について、Grokが避けた答え方をします。指定しない分野は、モデルの標準の扱いのままです。指針は、それを付けたリクエストにだけ効くので、会話が続くときは毎回送ります。

3行まとめ
- xAI(SpaceXSI)は、2026年10月の開発者向けリリースノートで、Grok APIに「内容の指針(guidelines)」を付けられる機能を公開しました。
- 指定できる分野は、性的な話題(nsfw)、暴力(violence)、乱暴な言葉(profanity)の3つで、ふるまいは今のところ「避ける(decline)」だけです。
- 指針はリクエスト1回ごとに効きます。会話が続くアプリでは、毎回送る必要があります。
前提知識:API、リクエスト、モデレーション
APIは、「プログラム同士の注文窓口」です。 私たちがGrokを使うときは、アプリやWebの画面に文字を打ちます。一方で、ほかの会社が自分のアプリの中にGrokを組み込むときは、画面を通さず、プログラムから直接「この文章に答えて」と注文を送ります。この注文の受付口がAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)です。レストランでたとえると、店内で食べるのが「Grokのアプリ」、お弁当の注文を電話で受けるのが「API」で、料理(答え)を作る厨房は同じです。
注文は、決まった書式の「リクエスト」で送ります。 リクエストは、JSON(ジェイソン)という、「項目名:値」を並べたテキストで書きます。たとえば「model(使うモデル)は grok-4.7」「input(質問)は、騎士の短い物語を書いて」のように書きます。注文書の欄が増えれば、頼めることも増えます。今回の新機能は、この注文書に「guidelines(指針)」という新しい欄が1つ増えた、と考えるとわかりやすいです。
モデレーションは、「出してよい内容かどうかの調整」です。 AIは、言葉の並びを学んで文章を作るので、頼まれ方しだいで、性的な表現、残酷な描写、汚い言葉も作れてしまいます。そこで、AIの会社は、モデルに標準の線引き(デフォルトのモデレーション)を持たせています。ただ、ちょうどよい線引きは、使う場所によって違います。大人向けの小説の手伝いと、小学生向けの学習アプリでは、同じ線では困ります。今回の機能は、この線を、アプリを作る側が、リクエストごとに、より厳しい側へ動かせるようにするものです。
HTTPのステータスコードは、「注文の受付結果の番号」です。 APIは、答えといっしょに3けたの番号を返します。200番台は「成功」、400番台は「注文書の書き方がおかしい」という意味です。今回のドキュメントには、400と422という番号が出てきます。どちらも「モデルを動かす前に、注文書の段階で断った」という意味で、料金のかかる計算が始まる前に止まるのが特徴です。
何が起きたか
xAI(SpaceXSI)の開発者向けリリースノート(2026年10月の項)に、「Custom moderation controls(カスタム・モデレーション・コントロール)」が載りました。説明のページによると、リクエストの本文に、次のような `guidelines` の配列を足します。
```json{ "model": "grok-4.7", "input": "Write a short story about a knight.", "guidelines": [ { "type": "policy", "category": "violence", "behavior": "decline" }, { "type": "policy", "category": "nsfw", "behavior": "decline" } ]}```
各項目は3つの欄でできています。
| 欄 | 意味 | 今、書ける値 |
|---|---|---|
| type | 項目の種類 | 常に "policy" |
| category | どの分野か | nsfw / violence / profanity |
| behavior | どうふるまうか | decline(避ける)のみ |
3つの分野で、Grokがどう変わるかは、次のとおりです(公式ドキュメントの説明を要約)。
| 分野 | 「decline」を指定したときの、ふるまい |
|---|---|
| nsfw(性的な話題) | 性的なほのめかしや会話を避ける。ただし、性に関する教育的・医療的な質問には答える |
| violence(暴力) | 生々しい暴力の描写を避ける。歴史やニュースの話には、生々しい細部なしで応じる |
| profanity(乱暴な言葉) | 汚い言葉を使わずに書く。汚い言葉だけを求める依頼や、ひどく不快な内容は断る |
なぜ重要か
「答えを消す」のではなく、「答え方を変える」しくみだからです。 ドキュメントは、Grokが指針を守りながら、自分の言葉で答えを書くと説明しています。返ってくる答えの形も、指針がないときと同じです。つまり、「暴力」を避けても、戦争の歴史の質問に答えなくなるわけではなく、生々しい描写を省いて答えます。
アプリを作る人が、使う場所に合わせて線を引けるからです。 子ども向けの学習アプリ、会社の受付チャット、家族で使う音声アシスタントなどでは、標準より控えめな答えが求められます。これまでは、アプリの側で、答えを後から調べて弾く(フィルターをかける)などの工夫が必要でした。ぼくの考えだけど、注文書の1欄で頼めるようになったことで、小さな開発チームでも、場面に合った答え方を作りやすくなります。
背景:なぜ、こうした機能が求められるのか
同じAIを、性格の違う多くのアプリが使うからです。 APIの利用者は、自分のサービスにAIを組み込みます。サービスごとに、利用者の年齢も、目的も違います。1つの標準の線引きで、すべての場面に合わせるのは難しく、「この場面では、ここまで」と選べる方が使いやすくなります。
避けたい内容を、文章で毎回頼むのは、不確かだからです。 ぼくの考えだけど、これまでも「乱暴な言葉は使わないで」と、指示の文章に書くことはできました。ただ、文章での頼み方は人によってばらつきます。決まった欄(category と behavior)で指定する形にすると、頼み方がそろい、書き間違いはモデルを動かす前にエラーで分かります。
技術・しくみ:注文書がどう処理されるか
ドキュメントの説明を、順番に並べると次のようになります。
| 順番 | 起きること |
|---|---|
| 1. 受付 | APIが、guidelines の書き方を確かめる |
| 2. 書き方の誤り | 知らない分野・ふるまい → 422。同じ分野を2回書いた・type が "policy" でない・対応していないモデルや設定 → 400。モデルは動かない |
| 3. 生成 | Grokが、指定された分野を避けながら、答えを書く |
| 4. 返答 | 答えの形は、指針なしのときと同じ |
使うときの決まりは、次の4つです。
- 変えたい分野だけ書く。 書かなかった分野は、モデルの標準の扱いのままです。1つの分野は1回だけ書けます。
- 指針は、それを付けたリクエストにだけ効く。 会話が何往復も続くときは、毎回送ります。xAIのPython用の部品(SDK)では、`chat.create` で会話を作るときに渡すと、会話に保存され、そのあとの送信に自動で付きます。
- 使える場所。 Chat Completions、Responses API、xAIのPython SDK の `chat.create`。OpenAIのPython SDKから使うときは `extra_body` に入れます。
- 使えない場所。 複数のAIが協力して答える「マルチエージェント」のモデル(例:grok-4.20-multi-agent)と、後から答えを受け取る「遅延の応答(deferred completions)」には使えません。また、検索などのサーバー側の道具やファイル添付のないリクエストで、`stop`(ここで止める文字)を指定したり、`n`(一度に作る答えの数)を2以上にしたりすると、使えません。
ドキュメントは、これらのふるまいを、今後、改良することがあるとも書いています。
これまでの流れ
- 2026年8月:xAIの開発者向けリリースノートに、Grok Bot の項目が載る。
- 2026年10月2日:音声の文字起こしモデル grok-voice-transcribe-1.0 の提供終了。2.0 に自動で切り替え(同じ値段)。
- 2026年10月:音声どうしの会話モデル Grok Voice 3.0 を公開(2.0 と同じ値段)。同じ月に、今回のカスタム・モデレーション・コントロールを公開。
- 2026年10月23日:スタートアップ向けの支援「Grok for Startups」の公式ページを公開(解説記事)。
使える知識(友人に説明するなら)
- モデレーションは「オン・オフ」ではなく「線の位置」:同じAIでも、使う場所に合わせて、線を厳しい側へ動かせます。
- 避ける=答えない、ではない:性の教育的な質問や、戦争の歴史の質問には、言い方を変えて答えます。
- 3分野・1種類のふるまい:今、指定できるのは nsfw・violence・profanity の3つで、ふるまいは「decline(避ける)」だけです。標準よりゆるめる指定はありません。
- 毎回送る:指針は、リクエスト1回ごとに効きます。会話アプリで1回目だけ送ると、2回目からは標準の扱いに戻ります。
- よくある誤解:「AIの答えに後からフィルターをかける機能」と思われがちですが、ドキュメントの説明では、答えを書く段階で指針に沿って書く形です。
つづきの問い
AIは、「暴力の描写」と「歴史の説明」の境目を、どうやって見分けているのでしょうか。AIが文章を作るしくみ(次に来る言葉を予測する)を知ると、線引きの難しさと、指針という形で頼む意味が、もっとはっきり見えてきます。
次に読む
- xAIが、スタートアップ向けの支援「Grok for Startups」を公開。AIの「クレジット」とは何か、なぜ最初は20%だけなのか(APIと従量課金のしくみ)
- テック・マヒンドラとSpaceXSIの提携。Grok Buildで、古いシステムを作り直す(会社がGrokをどう使うか)
- テスラが自社の半導体工場「オースティン・ファブ」を建設中。AIの学習用計算は年末400MWに(AIの「学習」と「推論」の違い)
出典
- xAI(SpaceXSI)開発者向けドキュメント「Release notes」(2026年10月の項) → https://docs.x.ai/docs/release-notes
- 同「Custom moderation controls」 → https://docs.x.ai/developers/advanced-api-usage/custom-moderation-controls
※機能の内容、使える場所、エラーの番号は、xAIの公式ドキュメントで確認しました(2026-10-29時点)。確認状況:リリースノートには「2026年10月」とだけあり、公開の日付と、指針を使ったときの料金の変化は、ドキュメントに書かれていません。
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