SpaceXのStarfallは、宇宙で作ったものを地球に持ち帰るための、無人の帰還カプセルです。直径約3.1m、高さ約0.75m、重さ約2,100kgで、約1,000kgの荷物を運べます。2026年6月23日に1回目の実証機が打ち上げられ、2回目は、10月20日予定のファルコン9「Bandwagon-5」に載っています。
3行まとめ
- 10月20日(米国東部時間)に打ち上げ予定のファルコン9「Bandwagon-5」は、小型衛星を多数載せる相乗り便で、SpaceXの帰還カプセル「Starfall」の2回目の実証も載せています。
- Starfallは、直径約3.1m、高さ約0.75m、重さ約2,100kgの円筒形で、約1,000kgの荷物を載せて、宇宙から地球へ持ち帰れる設計です。
- 目的は、無重力での製造(薬、材料など)の成果を、地球に戻すことです。FAA(米連邦航空局)の資料では、太平洋への再突入が2回、想定されています。
前提知識:宇宙から「戻る」のは、なぜ難しいのか
ロケットで宇宙へ行くより、宇宙から戻るほうが、むずかしい面があります。理由は、速さです。地球を回る低軌道の宇宙船は、秒速約7.8km(時速約2万8,000km)で飛んでいます。新幹線の約100倍です。地上に降りるには、この速さを、ほぼゼロにしなければなりません。
速さのエネルギーは、「質量 × 速さ × 速さ ÷ 2」で決まります。1kgあたりで計算すると、7,800 × 7,800 ÷ 2 で、約3,000万ジュールです。これは、同じ重さの火薬(TNT、1kgあたり約420万ジュール)の、約7倍です。このエネルギーが、どこへ行くかというと、大気との摩擦と、空気の圧縮による「熱」です。カプセルの前の空気が、ぎゅっと圧縮されて、数千度の高温になります。
そこで、再突入するカプセルには、熱から守る「耐熱シールド」が必要です。シールドは、あえて少しずつ焼けて、熱を持ち去るもの、または熱を通しにくい材料でできています。ふつうの金属では、数千度に耐えられません。
熱をしのいでも、まだ速いままです。大気で十分に減速したあと、カプセルは、パラシュートを開きます。パラシュートは、段階的に開きます。まず小さなもので姿勢と速さを安定させ、最後に大きなもので、ゆっくり着水(または着陸)する速さまで落とします。
つまり、帰還カプセルの仕事は、(1)正しい角度で大気に入る、(2)熱に耐える、(3)パラシュートで減速する、(4)回収される、の4つです。この4段階を、頭に入れておくと、Starfallの説明が読みやすくなります。
何が起きたか
打ち上げ情報サイトのLaunch Libraryによると、ファルコン9「Bandwagon 5(中傾斜軌道の相乗り専用便)」は、2026年10月20日の10時30分(世界時)に、フロリダのケープカナベラル宇宙軍基地のスペースローンチコンプレックス40から打ち上げ予定です。ブースターは「B1085」で、19回目の飛行とされています。
この便は、商業・政府の顧客の小型衛星を数十機、いっしょに運ぶ「相乗り」の便です。同じ情報では、この便に、SpaceXの「Project Starfall」の、2回目の実証ミッションも載っているとされています。
Starfallの1回目の実証は、2026年6月23日(米国東部時間)に、ファルコン9で打ち上げられました。専門メディアのSpaceflight Nowによると、SpaceXは、午前10時1分(米国東部夏時間)に、カプセルの分離を確認しました。ただし、SpaceXは、打ち上げの中継で、上段もカプセルも映さず、くわしい公開は少ない状態でした。
Starfallとは何か
Starfallは、SpaceXが開発している、無人の帰還カプセルです。SpaceXの「Starlink」「Starshield」「Starship」と同じ、「Star-」の名前のならびです。
数字を整理します(米国のFAAの環境評価をもとにした、Spaceflight Nowの報道による)。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 形 | 円筒形 |
| 高さ | 約0.75m |
| 直径 | 約3.1m |
| 重さ(荷物なし) | 約2,100kg |
| 運べる荷物 | 約1,000kg |
| 合計 | 約3,100kg |
| 上側の板(トップ・プレート) | アルミ構造、約1,400kg |
| 耐熱シールド | 炭素繊維の構造、約700kg |
| パラシュート | 3種類(ドローグ、パイロット、メイン) |
形は、高さより直径のほうが、ずっと大きい、平べったい円盤のような形です。これは、大気に入るとき、広い面で空気を受けて、減速するのに向いています。
大きな特徴は、「エンジンがない」ことです。報道によると、Starfallには、メインの推進装置がなく、軌道を下げる噴射(デオービット・バーン)もできません。不活性ガスで姿勢を変える装置だけがあります。つまり、向きは変えられるが、軌道は変えられません。地球に戻る軌道への切り替えは、別の方法が必要になります。その方法は、公開された資料からは、くわしく分かりません。
何のために作るのか
FAAの環境評価によると、Starfallの目的は2つです。
- 宇宙を通る、はやい荷物の配送(ポイント・ツー・ポイントの輸送)を可能にする。
- 無重力、真空、長い滞在時間、そして軌道からの帰還を「サービス」として売り、宇宙での製造の市場をつくる。
無重力では、地上と違うものができます。たとえば、重力で沈んだり浮いたりしない、きれいなたんぱく質の結晶や、新しいガラスなどです。NASAのCRS-35の荷物にも、無重力で人工網膜やガラスをつくる研究が入っていました(前の記事)。しかし、できたものは、地球に持ち帰らないと使えません。
今、持ち帰る荷物の手段として知られているのは、SpaceXのドラゴンなどです。Starfallは、荷物の返送に特化した、もうひとつの手段になる可能性があります。ただし、ドラゴンは、人も運べる、より大きな宇宙船です。Starfallは、荷物だけを運ぶ、無人の道具で、役割がちがいます。
回収のしくみ
FAAの資料では、カプセルは、太平洋で回収される計画です。ドラゴンの回収と似ています。再突入のあと、トップ・プレートが外れ、パラシュートが開く、という流れとされています。FAAは、SpaceXの運用ライセンスを変更して、「2回のStarfallの再突入」を認める判断をしました(環境への重大な影響なしとする、2026年5月の最終評価と決定)。
ぼくの考えだけど
「平べったい円盤で、エンジンなし」という設計は、軽く、安く、たくさん作ることを優先しているように見えます。ドラゴンのような、人を乗せる高い安全性は求めず、荷物の宅配に特化することで、費用を下げる考え方かもしれません。この考え方は、ロケットの再使用で費用を下げた流れと、似ています。費用の見かたは、ロケットは本当に高いのか?で整理しています。
つづきの問い
もし荷物を、毎日のように宇宙から持ち帰れるようになったら、どんな製品が、宇宙でつくる価値を持つのでしょうか。次の実証で、カプセルが無事に戻るかどうかが、最初の手がかりになります。
次に読む
出典
- Spaceflight Now「SpaceX launches reentry capsule demo mission called ‘Starfall’」(2026年6月23日) → https://spaceflightnow.com/2026/06/23/live-coverage-spacex-to-launch-reentry-capsule-demo-mission-called-starfall/
- Launch Library 2「Falcon 9 Block 5 | Bandwagon 5」(2026年10月20日時点) → https://ll.thespacedevs.com/2.2.0/launch/upcoming/?search=Bandwagon
- FAA「Final Environmental Assessment for SpaceX Starfall Reentry Vehicle Operations in the Pacific Ocean」(2026年5月)とFONSI/ROD → https://www.faa.gov/space/environmental/nepa_docs
※確認状況(2026-10-20):打ち上げの日時、ブースター番号、2回目の実証が載ることは、打ち上げ情報サイト(Launch Library)の予定にもとづきます。FAAの評価の数字は、Spaceflight Nowの報道を通して確認しました。打ち上げの結果と、再突入の結果は、まだ分かっていません。
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