スペースXの公式ページによると、ファルコン9は2026年10月23日午後3時48分(米国太平洋時間。日本時間24日午前7時48分)に、バンデンバーグ宇宙軍基地の発射台SLC-4Eから、スターリンク衛星27機を低軌道へ打ち上げました。1段目のブースターは、この打ち上げが36回目の飛行で、太平洋上の無人船「Of Course I Still Love You」に着陸しました。衛星は、打ち上げから約1時間2分後に分離され、SpaceXはXで27機の分離を確認したと発表しました。
3行まとめ
- スペースXは、2026年10月23日(米国太平洋時間)に、カリフォルニア州のバンデンバーグ宇宙軍基地から、ファルコン9でスターリンク衛星27機を低軌道へ打ち上げました(公式のミッション名は「Starlink 15-15」)。
- 1段目のブースターは、この打ち上げが36回目の飛行です。NASAの海面観測衛星や小惑星探査機DARTも運んだ機体で、今回も太平洋の無人船に着陸しました。
- 公式の時刻表では、打ち上げから約8分で1段目が着陸し、2段目は約45分の「休けい(慣性飛行)」のあと1秒だけエンジンを点け、約1時間2分後に衛星を分離します。
前提知識:ロケットの「1段目」と「2段目」、そして「軌道に乗る」とは
ロケットは、重い荷物を途中で捨てながら進む乗り物です。 ファルコン9は、2つの「段」を縦に積んだ2段式です。下の1段目には、マーリンという名前のエンジンが9基あり、燃料は液体酸素とロケット用の灯油(RP-1)です(SpaceX公式)。1段目は、打ち上げから2分あまり燃え続けて、空気の濃い低いところを抜けるまでの「力仕事」を担当します。燃料を使い切ったタンクは、ただの重りです。そこで1段目を切り離し、軽くなった2段目だけが、残りの加速を続けます。重りを捨てるほど、同じ燃料で速くなれるので、ロケットは段を分けています。
軌道に乗るとは、「落ち続けているのに、地面に当たらない」状態です。 ボールを横に投げると、少し先に落ちます。もっと速く投げると、もっと遠くに落ちます。地球は丸いので、十分に速く投げると、ボールが落ちる分だけ地面も丸く下がっていき、いつまでも地面に届かなくなります。これが「軌道に乗る」ことです。地上から数百kmの低軌道では、その速さは秒速約7.8km(時速約2万8千km)です。東京から大阪まで(約400km)を、1分かからずに通り過ぎる速さです。ロケットの燃料の大部分は、高く上がるためより、この横向きの速さを出すために使われます。
「再使用」は、いちばん高い部品を捨てないための工夫です。 ふつうのロケットは、1段目を海に捨てていました。1段目は、9基のエンジンと大きなタンクを持つ、ロケットでいちばん値段の高い部分です。ファルコン9は、切り離したあとの1段目のエンジンをもう一度点けて速さを落とし、脚を出して、船や陸の着陸場に立って降ります。点検して、また飛ばします。飛行機を1回ごとに捨てていたら、航空券がとても高くなるのと同じで、捨てずに使い回すことが、打ち上げの費用を下げるいちばんの近道だ、とSpaceXは説明しています。
「マックスQ」は、ロケットにいちばん強い風圧がかかる瞬間です。 走る車の窓から手を出すと、速いほど強く押されます。この押す力(動圧)は、空気の濃さ × 速さの2乗 に比例します。打ち上げ直後は遅いので弱く、上へ行くと空気が薄くなるので、また弱くなります。その途中に、力が最大になる瞬間があります。これがマックスQ(Qは動圧を表す記号)で、今回の時刻表では打ち上げから1分8秒後です。
何が起きたか
SpaceXの公式ページによると、打ち上げと着陸の事実は次のとおりです。
| 項目 | 公式ページの内容 |
|---|---|
| 日時 | 2026年10月23日 午後3時48分(米国太平洋時間)=日本時間24日 午前7時48分 |
| ロケット | ファルコン9 |
| 発射場所 | バンデンバーグ宇宙軍基地(カリフォルニア州)の発射台SLC-4E |
| 運んだもの | スターリンク衛星27機(低軌道へ) |
| 1段目 | この打ち上げが36回目の飛行 |
| 着陸 | 太平洋の無人船「Of Course I Still Love You」 |
| 衛星の分離 | 27機の分離を確認(SpaceXのX、日本時間24日午前8時51分の投稿) |
このブースターは、これまでに、海面の高さを測るNASAと欧州の衛星「Sentinel-6 Michael Freilich」、小惑星に体当たりして軌道を変えたNASAの探査機「DART」、小さな衛星をまとめて運ぶ「Transporter-7」、米国の偵察衛星を運ぶ「NROL」の3回などを打ち上げ、スターリンクは今回が27回目です(SpaceX公式)。地元の3つの郡(サンタバーバラ、サンルイスオビスポ、ベンチュラ)では、天気などによっては、ソニックブーム(音速を超えた物体が出す「ドン」という音)が聞こえた可能性がある、とSpaceXは知らせています。
打ち上げから衛星の分離までの約1時間(公式の時刻表)
公式ページの時刻表(すべて「おおよその時刻」)を、意味ごとに並べました。
| 打ち上げからの時間 | できごと | 何をしているか |
|---|---|---|
| 1分08秒 | マックスQ | 機体にかかる風圧が最大になる |
| 2分26秒 | 1段目のエンジン停止 | 1段目の力仕事が終わる |
| 2分29秒 | 1段目と2段目の分離 | 重りになったタンクを切り離す |
| 2分36秒 | 2段目のエンジン点火(1回目) | ここから2段目だけで加速 |
| 2分58秒 | フェアリング分離 | 衛星を包む先端のカバーを外す |
| 6分01秒〜6分24秒 | 1段目の再突入の噴射 | 大気に戻る前に減速して、熱と力を減らす |
| 8分01秒〜8分23秒 | 1段目の着陸の噴射、着陸 | 船の上に立って降りる |
| 8分39秒 | 2段目のエンジン停止(1回目) | まず仮の軌道に乗る |
| 53分13秒〜53分14秒 | 2段目のエンジン点火(2回目) | 約1秒だけの短い噴射 |
| 1時間02分04秒 | スターリンク衛星の分離 | 27機を放す |
なぜ、2段目は45分も「休む」のか。 一般に、軌道の形は、エンジンを点ける場所で決まります。最初の燃焼で乗る軌道は、地球に近いところと遠いところがある、少しつぶれた円(楕円)になりがちです。地球を半周ほど回って、高いところに来たところで、もう一度少しだけ加速すると、低い側が持ち上がり、円に近い軌道に整えられます。53分の時点で約1秒しか点けていないのは、大きな加速ではなく、この「形の微調整」に近い使い方だからだ、とぼくは考えています(今回の2回目の燃焼の目的は、公式ページには書かれていません)。
なぜ、フェアリングは2分58秒で外すのか。 フェアリングは、空気との摩擦や風圧から衛星を守るカバーです。空気がほとんどなくなる高さまで来たら、もう要りません。重りを1秒でも早く捨てるほど、2段目は効率よく加速できます。ただし早すぎると衛星が熱や風にさらされるので、空気が十分に薄くなるのを待って外します。
なぜ重要か
同じ1段目が36回飛ぶことは、「ロケットは使い捨て」という前提が変わったことを、数字で示しています。 1段目の着陸と再使用は、2015〜2017年に始まったばかりの技術でした(ファルコン9の着陸の歴史)。それが今では、1機のブースターが、NASAの科学衛星、軍の衛星、相乗り衛星、通信衛星と、性格の違う仕事を何年にもわたって続けています。お客さんの側から見ると、「中古のロケット」に大事な衛星を預けてよい、という信頼が積み上がってきた、ということでもあります。
バンデンバーグから打ち上げる理由も、地理で説明できます。 SpaceXの説明では、カリフォルニアの海岸にあるこの基地は、北極と南極の上を通る「極軌道」や、赤道に対して大きく傾いた軌道に向いています。真南へ打ち上げると、南極に着くまで、ずっと海の上を飛ぶからです。陸の上に部品を落とす心配がないことと、北や南の国々の上空を通る衛星を置けることが、ここで打ち上げる理由です。傾いた軌道の衛星は、日本を含む高緯度の地域の上空を通るので、スターリンクのように世界中で使う通信網には欠かせません。
知っておくと使える、ニュースを読むときのポイント
- 「何回目の飛行」は、そのブースターの経験の量: 打ち上げの記事で「◯回目の飛行」とあれば、同じ1段目が何回飛んだかを表します。今回は36回目です。
- 時刻は、現地時間と日本時間を分けて読む: 今回の打ち上げは、米国では10月23日の午後、日本では24日の朝です。日付が1日ずれるのは、よくあることです。
- よくある誤解: 「着陸したのはロケット全体」ではありません。戻ってくるのは1段目(と、回収できればフェアリング)で、2段目は軌道で衛星を放したあと、回収されません。
これまでの流れ
- 2015年12月: ファルコン9の1段目が、はじめて陸の着陸場に降りました(詳しくはこちら)。
- 2017年3月: 一度飛んだ1段目を、もう一度打ち上げる「再使用」の初飛行が行われました。
- 2020年〜2021年: 今回のブースターが、NASAの衛星Sentinel-6 Michael FreilichやDARTを、バンデンバーグから打ち上げました。
- 2026年10月22日: 最初の予定日は、悪天候で中止になりました(SpaceXのX)。
- 2026年10月23日: 同じブースターが36回目の飛行で、スターリンク衛星27機を運び、太平洋の無人船に着陸しました(SpaceX公式)。
- これから: SpaceXの打ち上げ予定の一覧には、バンデンバーグからのスターリンクの打ち上げが、10月27日、10月30日、11月5日と並んでいます(2026年10月24日時点)。
つづきの問い
1段目は、同じ機体で何回まで飛べるのでしょうか。飛ぶたびに、エンジンや機体のどこが傷み、何を交換しているのかを知ると、「再使用」の本当の難しさが見えてきます。
次に読む
- ファルコン9とは?大きさ、エンジン、運べる重さ、再使用のしくみを、SpaceX公式ページで確認
- ロケットが逆立ちして降りてきた日 ― ファルコン9の着陸の失敗と成功、そして再使用の初飛行(2015〜2017年)
- ロケットの値段(再使用で、打ち上げの費用はどう変わるのか)
出典
- SpaceX「Starlink Mission」(Starlink 15-15、2026年10月23日) → https://www.spacex.com/launches/sl-15-15
- SpaceXのX(衛星の分離の確認) → https://x.com/SpaceX/status/2113780307904381100
- SpaceX「Launches」(打ち上げ予定とバンデンバーグの説明) → https://www.spacex.com/launches/
- SpaceX「Falcon 9」 → https://www.spacex.com/vehicles/falcon-9/
※打ち上げの日時・場所・衛星の数・ブースターの飛行回数・着陸・時刻表は、SpaceXの公式ページ、衛星の分離と10月22日の中止はSpaceXのXで確認しました(2026-10-24時点)。
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