36回目の飛行のブースターで、スターリンク衛星27機を打ち上げ。ファルコン9「Starlink 15-15」の1時間を、公式の時刻表で読む

確認日 2026年10月24日 / 読む時間 約7分

目次
  1. 3行まとめ
  2. 前提知識:ロケットの「1段目」と「2段目」、そして「軌道に乗る」とは
  3. 何が起きたか
  4. 打ち上げから衛星の分離までの約1時間(公式の時刻表)
  5. なぜ重要か
  6. 知っておくと使える、ニュースを読むときのポイント
  7. これまでの流れ
  8. つづきの問い
  9. 次に読む
  10. 出典

スペースXの公式ページによると、ファルコン9は2026年10月23日午後3時48分(米国太平洋時間。日本時間24日午前7時48分)に、バンデンバーグ宇宙軍基地の発射台SLC-4Eから、スターリンク衛星27機を低軌道へ打ち上げました。1段目のブースターは、この打ち上げが36回目の飛行で、太平洋上の無人船「Of Course I Still Love You」に着陸しました。衛星は、打ち上げから約1時間2分後に分離され、SpaceXはXで27機の分離を確認したと発表しました。

3行まとめ

  • スペースXは、2026年10月23日(米国太平洋時間)に、カリフォルニア州のバンデンバーグ宇宙軍基地から、ファルコン9でスターリンク衛星27機を低軌道へ打ち上げました(公式のミッション名は「Starlink 15-15」)。
  • 1段目のブースターは、この打ち上げが36回目の飛行です。NASAの海面観測衛星や小惑星探査機DARTも運んだ機体で、今回も太平洋の無人船に着陸しました。
  • 公式の時刻表では、打ち上げから約8分で1段目が着陸し、2段目は約45分の「休けい(慣性飛行)」のあと1秒だけエンジンを点け、約1時間2分後に衛星を分離します。

前提知識:ロケットの「1段目」と「2段目」、そして「軌道に乗る」とは

ロケットは、重い荷物を途中で捨てながら進む乗り物です。 ファルコン9は、2つの「段」を縦に積んだ2段式です。下の1段目には、マーリンという名前のエンジンが9基あり、燃料は液体酸素とロケット用の灯油(RP-1)です(SpaceX公式)。1段目は、打ち上げから2分あまり燃え続けて、空気の濃い低いところを抜けるまでの「力仕事」を担当します。燃料を使い切ったタンクは、ただの重りです。そこで1段目を切り離し、軽くなった2段目だけが、残りの加速を続けます。重りを捨てるほど、同じ燃料で速くなれるので、ロケットは段を分けています。

軌道に乗るとは、「落ち続けているのに、地面に当たらない」状態です。 ボールを横に投げると、少し先に落ちます。もっと速く投げると、もっと遠くに落ちます。地球は丸いので、十分に速く投げると、ボールが落ちる分だけ地面も丸く下がっていき、いつまでも地面に届かなくなります。これが「軌道に乗る」ことです。地上から数百kmの低軌道では、その速さは秒速約7.8km(時速約2万8千km)です。東京から大阪まで(約400km)を、1分かからずに通り過ぎる速さです。ロケットの燃料の大部分は、高く上がるためより、この横向きの速さを出すために使われます。

「再使用」は、いちばん高い部品を捨てないための工夫です。 ふつうのロケットは、1段目を海に捨てていました。1段目は、9基のエンジンと大きなタンクを持つ、ロケットでいちばん値段の高い部分です。ファルコン9は、切り離したあとの1段目のエンジンをもう一度点けて速さを落とし、脚を出して、船や陸の着陸場に立って降ります。点検して、また飛ばします。飛行機を1回ごとに捨てていたら、航空券がとても高くなるのと同じで、捨てずに使い回すことが、打ち上げの費用を下げるいちばんの近道だ、とSpaceXは説明しています。

「マックスQ」は、ロケットにいちばん強い風圧がかかる瞬間です。 走る車の窓から手を出すと、速いほど強く押されます。この押す力(動圧)は、空気の濃さ × 速さの2乗 に比例します。打ち上げ直後は遅いので弱く、上へ行くと空気が薄くなるので、また弱くなります。その途中に、力が最大になる瞬間があります。これがマックスQ(Qは動圧を表す記号)で、今回の時刻表では打ち上げから1分8秒後です。

何が起きたか

SpaceXの公式ページによると、打ち上げと着陸の事実は次のとおりです。

項目公式ページの内容
日時2026年10月23日 午後3時48分(米国太平洋時間)=日本時間24日 午前7時48分
ロケットファルコン9
発射場所バンデンバーグ宇宙軍基地(カリフォルニア州)の発射台SLC-4E
運んだものスターリンク衛星27機(低軌道へ)
1段目この打ち上げが36回目の飛行
着陸太平洋の無人船「Of Course I Still Love You」
衛星の分離27機の分離を確認(SpaceXのX、日本時間24日午前8時51分の投稿)

このブースターは、これまでに、海面の高さを測るNASAと欧州の衛星「Sentinel-6 Michael Freilich」、小惑星に体当たりして軌道を変えたNASAの探査機「DART」、小さな衛星をまとめて運ぶ「Transporter-7」、米国の偵察衛星を運ぶ「NROL」の3回などを打ち上げ、スターリンクは今回が27回目です(SpaceX公式)。地元の3つの郡(サンタバーバラ、サンルイスオビスポ、ベンチュラ)では、天気などによっては、ソニックブーム(音速を超えた物体が出す「ドン」という音)が聞こえた可能性がある、とSpaceXは知らせています。

打ち上げから衛星の分離までの約1時間(公式の時刻表)

公式ページの時刻表(すべて「おおよその時刻」)を、意味ごとに並べました。

打ち上げからの時間できごと何をしているか
1分08秒マックスQ機体にかかる風圧が最大になる
2分26秒1段目のエンジン停止1段目の力仕事が終わる
2分29秒1段目と2段目の分離重りになったタンクを切り離す
2分36秒2段目のエンジン点火(1回目)ここから2段目だけで加速
2分58秒フェアリング分離衛星を包む先端のカバーを外す
6分01秒〜6分24秒1段目の再突入の噴射大気に戻る前に減速して、熱と力を減らす
8分01秒〜8分23秒1段目の着陸の噴射、着陸船の上に立って降りる
8分39秒2段目のエンジン停止(1回目)まず仮の軌道に乗る
53分13秒〜53分14秒2段目のエンジン点火(2回目)約1秒だけの短い噴射
1時間02分04秒スターリンク衛星の分離27機を放す

なぜ、2段目は45分も「休む」のか。 一般に、軌道の形は、エンジンを点ける場所で決まります。最初の燃焼で乗る軌道は、地球に近いところと遠いところがある、少しつぶれた円(楕円)になりがちです。地球を半周ほど回って、高いところに来たところで、もう一度少しだけ加速すると、低い側が持ち上がり、円に近い軌道に整えられます。53分の時点で約1秒しか点けていないのは、大きな加速ではなく、この「形の微調整」に近い使い方だからだ、とぼくは考えています(今回の2回目の燃焼の目的は、公式ページには書かれていません)。

なぜ、フェアリングは2分58秒で外すのか。 フェアリングは、空気との摩擦や風圧から衛星を守るカバーです。空気がほとんどなくなる高さまで来たら、もう要りません。重りを1秒でも早く捨てるほど、2段目は効率よく加速できます。ただし早すぎると衛星が熱や風にさらされるので、空気が十分に薄くなるのを待って外します。

なぜ重要か

同じ1段目が36回飛ぶことは、「ロケットは使い捨て」という前提が変わったことを、数字で示しています。 1段目の着陸と再使用は、2015〜2017年に始まったばかりの技術でした(ファルコン9の着陸の歴史)。それが今では、1機のブースターが、NASAの科学衛星、軍の衛星、相乗り衛星、通信衛星と、性格の違う仕事を何年にもわたって続けています。お客さんの側から見ると、「中古のロケット」に大事な衛星を預けてよい、という信頼が積み上がってきた、ということでもあります。

バンデンバーグから打ち上げる理由も、地理で説明できます。 SpaceXの説明では、カリフォルニアの海岸にあるこの基地は、北極と南極の上を通る「極軌道」や、赤道に対して大きく傾いた軌道に向いています。真南へ打ち上げると、南極に着くまで、ずっと海の上を飛ぶからです。陸の上に部品を落とす心配がないことと、北や南の国々の上空を通る衛星を置けることが、ここで打ち上げる理由です。傾いた軌道の衛星は、日本を含む高緯度の地域の上空を通るので、スターリンクのように世界中で使う通信網には欠かせません。

知っておくと使える、ニュースを読むときのポイント

  • 「何回目の飛行」は、そのブースターの経験の量: 打ち上げの記事で「◯回目の飛行」とあれば、同じ1段目が何回飛んだかを表します。今回は36回目です。
  • 時刻は、現地時間と日本時間を分けて読む: 今回の打ち上げは、米国では10月23日の午後、日本では24日の朝です。日付が1日ずれるのは、よくあることです。
  • よくある誤解: 「着陸したのはロケット全体」ではありません。戻ってくるのは1段目(と、回収できればフェアリング)で、2段目は軌道で衛星を放したあと、回収されません。

これまでの流れ

  • 2015年12月: ファルコン9の1段目が、はじめて陸の着陸場に降りました(詳しくはこちら)。
  • 2017年3月: 一度飛んだ1段目を、もう一度打ち上げる「再使用」の初飛行が行われました。
  • 2020年〜2021年: 今回のブースターが、NASAの衛星Sentinel-6 Michael FreilichやDARTを、バンデンバーグから打ち上げました。
  • 2026年10月22日: 最初の予定日は、悪天候で中止になりました(SpaceXのX)。
  • 2026年10月23日: 同じブースターが36回目の飛行で、スターリンク衛星27機を運び、太平洋の無人船に着陸しました(SpaceX公式)。
  • これから: SpaceXの打ち上げ予定の一覧には、バンデンバーグからのスターリンクの打ち上げが、10月27日、10月30日、11月5日と並んでいます(2026年10月24日時点)。

つづきの問い

1段目は、同じ機体で何回まで飛べるのでしょうか。飛ぶたびに、エンジンや機体のどこが傷み、何を交換しているのかを知ると、「再使用」の本当の難しさが見えてきます。

次に読む

出典

※打ち上げの日時・場所・衛星の数・ブースターの飛行回数・着陸・時刻表は、SpaceXの公式ページ、衛星の分離と10月22日の中止はSpaceXのXで確認しました(2026-10-24時点)。

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