スターリンク(@Starlink)は2026年10月26日、ブラジルの携帯電話会社Vivoとともに、Starlink Mobileの本格サービスを始めたと投稿しました。5,000万人の顧客が、携帯の電波が届かない場所で、アプリとメッセージを使えるとしています。すでに700万台の携帯電話がつながり、国全体をカバーする初めての全国サービスだと説明しています。Vivoは「Vivo Satélite」という名前で提供し、つながると画面の左上に「VIVO STARLINK」と表示されます。
3行まとめ
- スターリンクは2026年10月26日、ブラジルの携帯電話会社Vivoと組んで、スマホが衛星と直接つながる「Starlink Mobile」の本格サービスを始めたと発表しました。対象はVivoの顧客5,000万人で、すでに700万台がつながったとしています。
- Vivoはこれを「Vivo Satélite」と呼び、電波の届かない場所でも、アプリでメッセージ、通話、地図が使えると案内しています。つながると、画面の左上に「VIVO STARLINK」と出ます。
- しくみの要は、衛星が「宇宙にある携帯の基地局」として働き、スマホから見ると、提携先の電話会社の電波(ローミング)に見えることです。だから、特別なスマホが要りません。
前提知識:スマホは、ふだん何とつながっているのか
基地局は、スマホと電波をやりとりする、地上のアンテナです。ビルの屋上や鉄塔に付いています。スマホの電波は、1つの基地局から、だいたい数百メートルから数キロメートルの範囲にしか届きません。そのため、電話会社は、国じゅうに基地局をたくさん建てて、その範囲をつなぎ合わせています。地図をタイルで埋めるようなものです。
電波の届かない場所(圏外)は、このタイルが置かれていない場所です。山奥、海の上、熱帯雨林、町と町のあいだの長い道路などです。基地局を建てるには、土地、電源、そして基地局どうしや本社とつなぐ回線が必要です。人がほとんど住んでいない場所では、建てても使う人が少ないので、費用に見合いません。ブラジルは国土が約850万平方キロメートルと、日本(約38万平方キロメートル)の20倍以上の広さがあり、アマゾンの熱帯雨林も広がっています。地上の基地局だけで全土を埋めるのは、とても難しい国です。
距離と電波の弱まり方も、知っておくと役に立ちます。電波は、まわりに広がりながら進むので、距離が2倍になると、届く強さは4分の1になります(距離の2乗に反比例)。ぼくの計算だけど、基地局まで3キロメートルのときと、真上の衛星まで360キロメートルのときを比べると、距離は120倍なので、電波の強さは120 × 120 = 1万4,400分の1になります。スマホから衛星へは、それだけ弱い電波で届けることになります。衛星とスマホの直接通信が、長いあいだ「難しい」とされてきた理由が、この数字です。
ローミングは、自分の契約している電話会社の電波がない場所で、別の会社の電波を借りてつながるしくみです。海外旅行で、現地の電話会社につながるのが代表例です。スマホは、もともと「ほかの会社の基地局にもつながる」能力を持っています。Starlink Mobileは、この能力を使います。
何が起きたか
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表 | スターリンク(@Starlink)の投稿、2026年10月26日 15:53(協定世界時) |
| 提携先 | Vivo(ブラジルの携帯電話会社) |
| サービス名(Vivo側) | Vivo Satélite |
| 対象 | Vivoの顧客5,000万人(スターリンクの投稿) |
| つながった台数 | すでに700万台(スターリンクの投稿) |
| 使えること | 圏外の場所で、アプリとメッセージ(スターリンク)。アプリでメッセージ、通話、地図(Vivo) |
| 表示 | 画面の左上に「VIVO STARLINK」(機種によっては衛星のアイコンや「SAT」) |
| 条件(Vivoの案内) | 対象の料金プラン、4G・5GのSIMかeSIM、対応する機種、国内ローミングをオン、OSを最新に |
スターリンクは、これを「国全体をカバーする、初めての全国サービス」と説明しています。また、次世代の「Starlink Mobile V2」で、熱帯雨林の奥の小さな漁村から、人のいない高速道路の区間まで、すべてのブラジル人が高速のモバイルインターネットを使えるようにする、としています。
なぜ重要か
1つ目は、規模です。5,000万人の顧客が対象で、700万台がすでにつながったという数字は、「試験」ではなく、普通の利用者が、ふだんのスマホで使い始めた段階であることを示しています。
2つ目は、条件が「スマホの設定」だけであることです。Vivoの案内にある条件は、料金プラン、SIM、対応機種、国内ローミング、OSの更新です。衛星用のアンテナや、専用の機械は出てきません。「国内ローミングをオンにする」という条件は、前提知識で説明したとおり、衛星の電波が、スマホから見ると「ほかの会社の電波」として扱われることの表れです。
3つ目は、国の電波のルールとつながっていることです。スターリンクは10月9日、ブラジルの通信の規制当局(ANATEL)が、Starlink Mobileに2GHz帯の電波を使うことを認める投票をしたと投稿しています。今回の本格サービスは、その約2週間後です。
技術・しくみ:衛星が「宇宙の基地局」になる
スターリンクの公式ページ(Starlink Mobile、2026年10月27日に確認)は、しくみを次のように説明しています。
| しくみ | 公式ページの説明 |
|---|---|
| 衛星の数 | 低い軌道に650機 |
| 使えるスマホ | 空が見える場所で、今あるLTE(4G)対応のスマホ |
| 衛星の役目 | 宇宙の携帯基地局として働くアンテナを搭載 |
| アンテナ | フェーズドアレイアンテナ(電波を向ける方向を、電子的に変えられる) |
| 地上とのつなぎ | レーザー通信で、地上のどこへでもつなぐ |
| 電話会社との関係 | 普通のローミングの相手と同じように、ネットワークに組み込める |
フェーズドアレイアンテナは、たくさんの小さなアンテナを並べ、それぞれが出す電波のタイミングを少しずつずらすことで、電波の束(ビーム)を、狙った方向に絞るしくみです。懐中電灯を、ぼんやり全体を照らす形から、1点を強く照らす形に変えるイメージです。前提知識で見た「1万4,400分の1」の弱さを、衛星側の大きなアンテナで、狙った場所の電波だけを集めて聞くことで補っています。
レーザー通信は、衛星どうしを光でつなぐしくみです。地上の基地局は、地面の下の光ファイバーで本社とつながっていますが、衛星にはそれがありません。そこで、衛星から衛星へ光でデータを渡し、地上の受信局のある場所まで運びます。熱帯雨林の真ん中のように、近くに地上の設備がない場所でも使えるのは、このためです。
使える機能も、公式ページで整理されています。データは40以上のアプリと100以上の機種で使え、音声は今はアプリで使えて、今後は電話の標準の通話機能に対応する予定としています。Vivoが「アプリで、メッセージ、通話、地図」と案内しているのは、この段階に合っています。
V2(次世代)について、公式ページは、SpaceXが独自に設計した半導体とフェーズドアレイアンテナで、数千のビームを扱い、第1世代と比べて約20倍の処理量(スループット)になるとしています。また、V2では、ほとんどの環境で、今の地上の通信と同じくらいの使い心地の5G接続を目指すと説明しています。
これまでの流れ
- 2026年10月6日: 米国のFCCが、スペースXの次世代のスマホ直接通信の衛星(最大1万5,000機)を、条件つきで承認しました(DA 26-1078)。
- 2026年10月9日: スターリンクが、ブラジルのANATELが、Starlink Mobileの2GHz帯の利用を認める投票をしたと投稿しました。
- 2026年10月21日: FCCが、スマホから衛星への「上り」専用の電波の免許3つを、スペースXの子会社が引き継ぐことを承認しました(DA 26-1129)。
- 2026年10月26日: スターリンクとVivoが、ブラジルでの本格サービスの開始を投稿しました。
知っておくと使える、ニュースを読むときのポイント
- 「普通のスマホで衛星につながる」の正体は、ローミング: 衛星が、提携先の電話会社の基地局のように振る舞います。だから、端末の設定(国内ローミングなど)が条件になります。
- 今使える機能と、次世代の機能を分けて読む: 今は「アプリでのデータ、メッセージ、通話」です。動画やビデオ通話、標準の通話機能は、公式ページで「今後」とされている機能です。
- 「空が見える場所」が前提: 衛星の電波は、建物の中や深い谷では届きにくくなります。圏外を「完全になくす」のではなく、「空の下の圏外」を埋めるものと考えると、誤解がありません。
次に読む
- FCCがスペースXに「スマホ→衛星」用の電波を追加で承認。なぜ“上り”の電波が大事なのか
- Starlink 15-15、ブースター36回目の飛行で27機を打ち上げ
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つづきの問い:衛星は、秒速約7.5キロメートルで空を横切ります。1機の衛星が見えなくなったとき、通話中のスマホは、どうやって次の衛星へ乗り換えているのでしょうか。
出典
- Starlink(@Starlink)の投稿(2026年10月26日、ブラジルでの本格サービス開始)→ https://x.com/Starlink/status/2114747196226859108
- Vivo(@vivobr)の投稿(2026年10月26日、Vivo Satélite)→ https://x.com/vivobr/status/2114854992511127990
- Vivo(@vivobr)の返信(2026年10月26日、表示と利用条件)→ https://x.com/vivobr/status/2114865188826456333
- Starlink(@Starlink)の投稿(2026年10月9日、ANATELの2GHz帯の承認)→ https://x.com/Starlink/status/2108676180467724397
- Starlink「Starlink Mobile」(公式ページ、2026年10月27日に確認)→ https://www.starlink.com/business/direct-to-cell
確認状況
本格サービスの開始、5,000万人、700万台、全国サービスという説明は、スターリンクの公式投稿で確認しました。サービス名、使える機能、表示、利用条件は、Vivoの公式アカウントの投稿で確認しました。料金と対応機種の一覧は、この記事では扱っていません。この記事は、科学技術の学習を目的としたもので、投資の助言ではありません。
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