ラトビアが、テスラのFSD(Supervised)を承認。5月のテストで「信号無視」を指摘した国が、半年で認めた理由

確認日 2026年10月26日 / 読む時間 約7分

目次
  1. 3行まとめ
  2. 前提知識:型式認可と「レベル2」
  3. 何が起きたか
  4. なぜ重要か:一度「待った」をかけた国が認めた
  5. 技術・しくみ:なぜ「速度の設定」が問題になるのか
  6. これまでの流れ
  7. 友人に説明するなら
  8. 次に読む
  9. 出典
  10. 確認状況

テスラの欧州アカウント(@teslaeurope)は、2026年10月26日、ラトビアでFSD(Supervised)が承認され、まもなく配信を始めると発表しました。報道によると、ラトビアの道路交通安全局(CSDD)は、オランダのRDWが出した暫定の型式認可を、自国でも認めました。CSDDは5月、現地のテストで、信号への対応、車線の選び方、制限速度の変化への対応に問題があったとしていました。報道では、テスラが、制限速度を超える設定の幅を小さくし、運転者の見張りを強めるなどの変更を示したとされています。

3行まとめ

  • テスラ欧州の公式アカウントが、2026年10月26日、ラトビアでFSD(Supervised)が承認された、配信はまもなく始まる、と発表した。
  • ラトビアの道路交通安全局(CSDD)は、オランダのRDWが出した暫定の型式認可を、自国でも認めたと報じられている。報道の数え方では、EUで10か国目。
  • CSDDは2026年5月、現地テストで「信号への対応」「車線の選び方」「速度の変化への対応」の問題を指摘していた。報道では、テスラが速度の設定と運転者の見張りを見直したとされている。

前提知識:型式認可と「レベル2」

型式認可とは、「この型の車(またはシステム)は、安全の基準を満たしている」と、国の機関が認める手続きです。1台ずつ検査するのではなく、設計の型ごとに認めます。たとえるなら、料理の「レシピ」を審査して、「このレシピどおりに作れば安全」と認めるようなものです。同じレシピで作る何万台もの車が、まとめて道路を走れるようになります。ソフトウェアで動く運転支援も、ソフトウェアの版ごとに、この審査の対象になります。だから、ソフトウェアを大きく変えると、認可のやり直しや追加の説明が必要になることがあります。

ヨーロッパでは、1つの国の機関が出した認可を、ほかの国が認めることができます。今回の土台は、オランダの車両認可機関RDWが、2026年4月10日に出した認可です。RDWによると、この認可は当面、オランダ国内だけで有効で、EU全体で使うには、欧州委員会での加盟国の投票(過半数の賛成)が必要です。それまでの間、各国は、それぞれの判断で、自国の道路でも使ってよいと認められます。ラトビアは、この道を使いました。

レベル2は、自動運転の段階を決めるSAE(米国の自動車技術者協会)の分類で、「ハンドル操作と、加速・ブレーキを、車が同時に手伝う。でも、運転の責任は、いつも人にある」段階です。RDWも、FSD(Supervised)の車は「自動運転車ではない」と書いています。「Supervised」は「人が見守る」という意味で、名前そのものが、この責任の分け方を表しています。

何が起きたか

テスラの欧州・中東・アフリカの公式アカウント(@teslaeurope)は、2026年10月26日(日本時間の19時36分ごろ)、ラトビアでFSD(Supervised)が承認され、配信(ロールアウト)がまもなく始まると投稿しました。10日前の10月16日にも、同じ形で、スロバキアでの承認を発表しています。

報道(ロイター通信の配信を引用した各社)によると、ラトビアの道路交通安全局(CSDD)は、RDWの暫定の型式認可を、ラトビアでも認めたと説明しました。CSDDは、RDWの資料を確かめ、RDWやほかの加盟国の機関と相談し、テスラが示したシステムの変更点を評価した、とされています。

なぜ重要か:一度「待った」をかけた国が認めた

ラトビアは、すんなり認めた国ではありません。地元のEVメディア(Uzlādēts.lv、2026年5月24日)によると、CSDDは、ラトビアの道路で行われたテストで、次の問題があったと公表していました。

CSDDが5月に指摘した点どういうことか
信号への対応信号の表示に従わない場面があった。CSDDは、重大な安全上の違反としていた
車線の選び方進むべきでない車線を選ぶことがあった
速度の変化への対応制限速度が変わる場所で、速度を合わせられないことがあった

CSDDは、当時、「現実の道路で使う前に、あらゆる場面で、十分に確かめられ、安全でなければならない」という立場でした。それから約5か月で、認める判断に変わりました。

報道によると、CSDDが挙げた、テスラの変更点は次のとおりです。

  • 制限速度を超える設定の幅を、小さくした。
  • 運転者が設定した速度の上乗せ(オフセット)を、走行のたびに自動で元に戻すようにした。
  • 運転者の見張り(ドライバーモニタリング)を、強めた。

また、テスラは4月13日に申請し、CSDDは、その後、冬の運転についての資料などを、追加で求めたと報じられています。

技術・しくみ:なぜ「速度の設定」が問題になるのか

運転支援には、ふつう、「制限速度より、少し速く走ってよい」というオフセット(上乗せの幅)を、運転者が決められる機能があります。たとえば制限速度が50km/hの道で、オフセットが+10km/hなら、車は60km/hを目安に走ります。

ここで、次の2つが重なると、問題になります。

  1. 制限速度が変わる場所で、車が新しい速度を読み取りそこねる(5月のテストで指摘された点)。
  2. 前回のドライブで決めた大きなオフセットが、そのまま残る。

すると、たとえば、90km/hの道から50km/hの道に入ったのに、車が速いまま走り続けるおそれがあります。ラトビアの道路は、町の中に入ると、急に制限速度が下がる場所が多くあります。報道で伝えられた変更点は、ちょうど、この2つの弱点を、両側から小さくするものです。上乗せの幅を小さくし、毎回リセットすることで、読み取りに失敗したときの「はみ出し」を減らせます。

もう1つの柱が、運転者の見張りです。RDWの説明では、車内のカメラで、運転者の目が道路を向いているかを確かめ、注意が足りない状態がくり返されると、警告が強くなり、機能が一時的に使えなくなることがあります。レベル2では、最後の安全装置は人です。だから、システムが間違えたときに、人がすぐ気づける状態を保つことが、承認の条件の中心になります。

テスラのカメラの仕組みはTesla Vision、運転者を見るカメラはキャビンカメラとキャビンレーダーで、詳しく見ています。速度の上乗せの考え方は、速度アシストと制限速度の警告と、TACC(交通状況に応じたクルーズコントロール)が参考になります。

これまでの流れ

  • 2026年4月10日: オランダのRDWが、FSD(Supervised)に認可を出す。当面、オランダ国内だけで有効(RDW)。
  • 2026年4月13日: テスラが、ラトビアに申請(報道)。
  • 2026年5月: リトアニア、エストニアなどが、RDWの認可を認める(報道)。CSDDは、現地テストの問題を指摘し、承認を見送る(Uzlādēts.lv、5月24日)。
  • 2026年10月16日: スロバキア運輸省が、RDWの認可を公式に認める(スロバキアの記事)。
  • 2026年10月26日: テスラ欧州が、ラトビアでの承認を発表。報道の数え方で、EUの10か国目。

友人に説明するなら

  • 「ヨーロッパでFSDが使える国」は、EU全体の承認ではなく、国ごとの判断で増えている。
  • 認める国は、オランダの書類をそのまま受け取るだけでなく、自国の道路でのテスト結果を見て、条件を付けることがある。ラトビアは、その例。
  • 承認されても、責任は運転者にある(レベル2)。「承認=手放しでよい」は、よくある誤解。

次に読む

つづきの問い:EU全体の承認の投票で、国ごとにばらばらだった「条件」は、どうそろえられるのでしょうか。

出典

確認状況

ラトビアでの承認と、配信がまもなく始まることは、テスラ欧州の公式投稿で確認しました。CSDDの説明(テスラの変更点、申請日、追加資料)と「10か国目」という数え方は、報道ベースです。ラトビアで実際に使えるようになる日は、発表されていません。この記事は、科学技術の学習を目的としたもので、投資の助言ではありません。

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