スペースXの公式ページとXの投稿によると、ファルコン9は2026年10月27日(日本時間の午後4時台)に、バンデンバーグ宇宙軍基地の発射台SLC-4Eから、スターリンク衛星27機を低軌道へ打ち上げ、27機すべての分離を確認しました(ミッション名「Starlink 15-16」)。1段目のブースターは26回目の飛行で、これまでに米宇宙軍のUSSF-62、OneWebの衛星、米国の偵察衛星NROL-145、相乗りのTransporter-18、21回のスターリンクを運んでいます。同じ発射台からは、10月23日に続く4日ぶりの打ち上げです。
3行まとめ
- スペースXは、2026年10月27日(日本時間の午後4時台)、カリフォルニア州のバンデンバーグ宇宙軍基地から、ファルコン9でスターリンク衛星27機を打ち上げ、27機すべての分離を確認しました(公式のミッション名は「Starlink 15-16」)。
- 1段目のブースターは26回目の飛行です。米宇宙軍の衛星、米国の偵察衛星、相乗り衛星、さらにはライバルの通信衛星網OneWebの衛星まで運んできた機体です。
- 同じ発射台SLC-4Eからは、10月23日の「Starlink 15-15」に続く4日ぶりの打ち上げで、発射台とブースターの「使い回しの速さ」が、打ち上げの回数を支えています。
前提知識:ブースター、低軌道、ソニックブーム
ブースター(1段目)は、ロケットの「いちばん高価な力持ち」です。 ファルコン9は2段式で、下の1段目にはマーリンというエンジンが9基並んでいます(SpaceX公式)。打ち上げから約2分半、液体酸素とロケット用の灯油(RP-1)を燃やして、空気の濃い低いところを突き抜けるのが1段目の仕事です。燃料を使い切ったら切り離されますが、ファルコン9の1段目は、そこで捨てられません。もう一度エンジンを点けて減速し、脚を出して、海の上の無人船に立って降ります。たとえるなら、長距離バスの運転手が、途中の町で降りて自分の車で帰ってきて、また次の便を運転するようなものです。「26回目の飛行」とは、この1段目が、26回目の仕事に出たという意味です。
低軌道は、地上からおよそ数百kmの「近い宇宙」です。 東京から名古屋くらいの距離を、真上に行ったところだと考えてください。そこで地球を回り続けるには、秒速約7.8km(時速約2万8千km)という、ものすごい横向きの速さが必要です。この速さで、地球を約1時間半で1周します。スターリンクの衛星が低軌道を使うのは、地上との距離が近いほど、電波が行って帰ってくる時間(遅れ)が短くなるからです。静止衛星(高さ約3万6千km)と比べると、距離はおよそ70分の1です。距離が短ければ、オンラインゲームやビデオ通話の「ラグ」も小さくなります。
ソニックブームは、音より速い物体が引きずる「圧力の壁」の音です。 船が水面を走ると、船首から「V」の字に波が広がります。音より速く飛ぶ物体も、空気の中に同じような圧力の波をつくり、それが地上に届くと、雷のような「ドン」という音になります。ファルコン9では、上昇中だけでなく、1段目が戻ってくるときにも、音より速い速度で大気に入るため、この音が出ることがあります。今回、SpaceXは、サンタバーバラ、サンルイスオビスポ、ベンチュラの3つの郡で、天気などによってはソニックブームが聞こえる可能性がある、と知らせていました。
何が起きたか
SpaceXの公式ページとXの投稿で確認できた事実は、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ミッション | Starlink 15-16 |
| 日時 | 2026年10月27日 日本時間の午後4時台(米国太平洋時間では27日の午前0時台) |
| ロケット | ファルコン9 |
| 発射場所 | バンデンバーグ宇宙軍基地(カリフォルニア州)の発射台SLC-4E |
| 運んだもの | スターリンク衛星27機(低軌道へ) |
| 1段目 | この打ち上げが26回目の飛行 |
| 着陸の計画 | 太平洋の無人船「Of Course I Still Love You」 |
| 衛星の分離 | 27機の分離を確認(SpaceXのX、日本時間27日午後5時29分の投稿) |
公式の時刻表(すべて「おおよその時刻」)では、打ち上げから1分8秒でマックスQ(機体にかかる風圧が最大になる瞬間)、2分29秒で1段目と2段目が分離、2分58秒で衛星を包むカバー(フェアリング)を外し、8分22秒で1段目が船に着陸します。2段目は8分40秒でいったんエンジンを止め、約45分の慣性飛行のあと、53分14秒から約2秒だけエンジンを点け、1時間2分6秒後に衛星を分離します。この流れは、4日前のStarlink 15-15の記事で詳しく読み解いたものと、ほぼ同じです。
このブースターの「経歴」が面白い
公式ページによると、今回の1段目は、これまでに次の打ち上げを担当しています。
| これまでの仕事 | どんな打ち上げか |
|---|---|
| USSF-62 | 米宇宙軍(U.S. Space Force)のミッション |
| OneWeb Launch 20 | 英国に本社を置く、別の会社の通信衛星網「OneWeb」の衛星 |
| NROL-145 | 米国の偵察衛星を運用する国家偵察局(NRO)のミッション |
| Transporter-18 | 多くの小型衛星をまとめて運ぶ、相乗りのミッション |
| スターリンク 21回 | 自社の通信衛星 |
注目したいのは、OneWebです。 OneWebは、スターリンクと同じく、低軌道に多数の衛星を並べてインターネットを届ける通信衛星網です。つまり、市場ではスターリンクのライバルです。そのライバルの衛星を、SpaceXのロケットが運び、同じ1段目が、のちに自社のスターリンクも運んでいます。打ち上げは「運送業」なので、荷主がライバルでも、運べる手段が限られていれば、選ばれることがあります。ぼくの考えだけど、これは、宇宙への「トラック」を持っている会社が、宇宙の通信の競争の中でも強い立場にいる、ということを示す例だと思います。
もう一つは、軍や国の衛星と、自社の量産衛星が、同じ機体に乗っていることです。 国の重要な衛星は、失敗が許されません。その打ち上げに使われた1段目が、点検を受けてまた飛び、自社の衛星を運ぶ。1機の機体の中で、「確実さが最優先の仕事」と「回数をこなす仕事」が混ざっていることは、再使用のロケットへの信頼が、すでに積み上がっていることを表しています。
なぜ重要か:4日ごとに飛ばせる理由
同じ発射台から、4日でまた打ち上げられることが、スターリンクを支えています。 10月23日の「Starlink 15-15」(1段目は36回目の飛行)と、今回の10月27日の「Starlink 15-16」は、どちらもバンデンバーグの同じ発射台SLC-4Eから打ち上げられました(SpaceX公式)。1回の打ち上げで27機ずつ衛星を足していくので、打ち上げの間隔が短いほど、衛星網は速く育ちます。
間隔を縮めるには、「ロケット」と「発射台」と「船」の3つを、それぞれ速く回す必要があります。
| 回すもの | 何が必要か |
|---|---|
| 1段目 | 着陸したあと、港に戻して点検し、次の打ち上げに使う。機体は複数あるので、交代で使える |
| 発射台 | 打ち上げの熱と炎で傷んだ設備を直し、次の機体を立てる |
| 無人船 | 太平洋の着陸地点まで行き、1段目を載せて港に戻る |
今回の1段目(26回目)と、4日前の1段目(36回目)は、別の機体です。つまり、1機の機体を4日で回しているのではなく、何機もの「経験豊富な」ブースターを交代で使っているから、この間隔が実現しています。飛行機の会社が、何機もの機体を交代で飛ばして、毎日の便を回しているのと同じ考え方です。
バンデンバーグから打ち上げる理由は、地理です。 SpaceXの説明では、カリフォルニアの海岸にあるこの基地は、北極・南極の上を通る「極軌道」や、赤道に対して大きく傾いた軌道に向いています。南へ向けて打ち上げると、南極までずっと海の上を飛ぶので、陸の上に部品を落とす心配がないからです。傾いた軌道の衛星は、日本のような緯度の高い地域の上空も通るので、世界中で使う通信網には欠かせません。
知っておくと使える、ニュースを読むときのポイント
- 「何回目の飛行」は、機体ごとに違う: 同じ週の打ち上げでも、使うブースターは別の機体です。今回は26回目、4日前は36回目でした。
- 打ち上げの間隔は、「発射台ごと」に見る: SpaceXは、フロリダとカリフォルニアの複数の発射台を使います。「4日ぶり」は、同じSLC-4Eからの間隔です。
- よくある誤解: 「ライバルの衛星は、ライバルのロケットで打ち上げる」とは限りません。打ち上げは運送業で、荷主は、値段・時期・実績で運ぶ手段を選びます。
これまでの流れ
- 2015年12月: ファルコン9の1段目が、はじめて着陸に成功しました(詳しくはこちら)。
- 2017年3月: 一度飛んだ1段目を、もう一度打ち上げる「再使用」の初飛行が行われました。
- これまで: 今回の1段目は、USSF-62、OneWeb Launch 20、NROL-145、Transporter-18と、21回のスターリンクを打ち上げてきました(SpaceX公式)。
- 2026年10月23日: 同じ発射台SLC-4Eから、36回目の飛行のブースターで「Starlink 15-15」を打ち上げました(記事)。
- 2026年10月27日: 26回目の飛行のブースターで「Starlink 15-16」を打ち上げ、27機の分離を確認しました(SpaceXのX)。
- これから: SpaceXの打ち上げ予定には、同じSLC-4Eから、米宇宙軍の「USSF-432」が11月1日の予定で載っています(2026年10月27日時点)。
つづきの問い
ブースターを何機も交代で使うなら、SpaceXは、いったい何機の1段目を持っていて、1機あたり年に何回飛ばしているのでしょうか。その数がわかると、「打ち上げの回数」を決めているのが、ロケットなのか、発射台なのか、船なのかが見えてきます。
次に読む
- 36回目の飛行のブースターで、スターリンク衛星27機を打ち上げ。ファルコン9「Starlink 15-15」の1時間を、公式の時刻表で読む
- ファルコン9とは?大きさ、エンジン、運べる重さ、再使用のしくみを、SpaceX公式ページで確認
- ロケットの値段(再使用で、打ち上げの費用はどう変わるのか)
出典
- SpaceX「Starlink Mission」(Starlink 15-16) → https://www.spacex.com/launches/sl-15-16
- SpaceXのX(打ち上げの中継) → https://x.com/SpaceX/status/2114979142638960965
- SpaceXのX(27機の分離の確認) → https://x.com/SpaceX/status/2114998002129440995
- SpaceX「Launches」(打ち上げ予定とバンデンバーグの説明) → https://www.spacex.com/launches/
※確認状況: 打ち上げの場所・衛星の数・ブースターの飛行回数と経歴・時刻表はSpaceXの公式ページ、打ち上げと27機の分離はSpaceXのXで確認しました(2026-10-27時点)。正確な打ち上げ時刻と、1段目の着陸の結果は、公式の発表では確認できていません。
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