SpaceXは2026年10月20日、スターシップのフライト15で、ブースター(スーパーヘビー)と宇宙船(シップ)の両方を、発射台の塔のアーム(通称「チョップスティック」)でつかまえる計画だと説明しました。ブースターの塔キャッチは過去に成功していますが、宇宙船のキャッチはまだ一度もありません。
3行まとめ
- 10月20日(米国時間)、SpaceXはスターシップの次の飛行(フライト15)を「来月」とし、ブースターと宇宙船の両方を、塔でつかまえる計画だと述べました。
- ブースターを塔でつかまえたことは、これまでにあります。宇宙船をつかまえたことは、まだありません。
- 両方をつかまえられると、ロケット全体が発射場に戻り、点検して、すぐ再び飛ばせる、という再使用の形に近づきます。
前提知識:ロケットは、なぜ「使い捨て」だと高いのか
飛行機は、同じ機体で何千回も飛びます。ところが、昔のロケットは、1回飛ぶと、海に落ちて、使い捨てでした。飛行機が1回の飛行ごとに捨てられる世界を想像してみてください。運賃は、機体の値段そのものになってしまいます。
ロケットの費用は、燃料よりも、「機体を作る費用」のほうがずっと大きいとされています。スターシップが使う燃料は、液体メタンと液体酸素で、重さあたりの値段は安い部類です。高いのは、エンジン、タンク、制御装置など、「作るのに手間がかかるもの」です。だから、機体を回収して、もう一度飛ばせれば、1回あたりの費用は大きく下がります。この考え方は、ロケットは本当に高いのか?で、数字で整理しています。
回収には、いくつかの方法があります。パラシュートで海に降ろす方法、脚を出して地面に立つ方法(ファルコン9の方法)、そして、スターシップが目指す「塔でつかまえる」方法です。脚で立つ方法は、脚そのものが重くなります。ロケットは、1kg重くなるごとに、運べる荷物が減るので、脚を省けるなら、省きたいのです。
何が起きたか
SpaceXは、2026年10月20日(米国時間)の決算の説明会(ウェブ中継)で、スターシップの今後の計画に触れました。複数の専門メディアの報道によると、イーロン・マスク氏は、フライト15について「来月に行うと見込んでいて、ブースターと宇宙船の両方をつかまえる試みをする」という趣旨を述べました。成功の見通しについては、「最初の飛行で成功は保証されないが、次の飛行で成功する可能性のほうが高い」という趣旨を述べたと伝えられています。
説明会では、約80秒のアニメーションも流されました。地上から塔のアームを見上げる場面から始まり、宇宙船が、横向き(腹を下にした姿勢)で降りてきて、翼のようなフラップで姿勢を整え、最後に垂直に起き上がって、塔のアームの間に収まる、という流れでした。
報道によると、フライト15に割り当てられた宇宙船は「Ship 42」です。2026年9月には、スターボースの第2発射台(パッド2)のアームが、この宇宙船を持ち上げて、キャッチの位置に置く模擬の作業を行ったと伝えられています。
打ち上げの日付は、SpaceXからは、まだ確定した発表がありません。一部のメディアは11月8日と伝えていますが、これは報道ベースの日付です。FAA(米連邦航空局)の許可については、SpaceX側が、塔でのキャッチを含む許可を見込む、と説明していると伝えられています。
「塔でつかまえる」しくみ
スターシップは、2つの部分でできています。
| 部分 | 役割 | 回収のしかた |
|---|---|---|
| スーパーヘビー(1段目のブースター) | 最初の数分で、宇宙の入口まで押し上げる | 発射場に戻って、塔でつかまえる(過去に成功あり) |
| スターシップ(上段の宇宙船) | 軌道まで行き、荷物を運ぶ | 大気圏に再突入して、発射場に戻り、塔でつかまえる(フライト15で初挑戦の予定) |
発射台の塔には、2本の大きなアームがあります。形が「箸」に似ているので、SpaceXは「チョップスティック」と呼んでいます。ロケットは、塔の横に、ぴたりと降りてきて、アームに、側面の「つかむ場所」をひっかけて、止まります。脚は、いりません。
ここで、いちばんむずかしいのは、「位置の精度」です。ブースターは、直径9m、高さ70m級の巨大な円筒です。それを、塔のアームの幅の中に、数十センチ単位の精度で、ぴたりと降ろす必要があります。エンジンの噴射で、横にも、上下にも、細かく調整します。もし外れれば、塔や発射台を傷つける危険もあります。
宇宙船の場合は、さらに難題があります。
- 速さが段違い: ブースターは、宇宙の入口までしか行かないので、戻る速さは比較的ゆるやかです。宇宙船は、軌道の速さ(秒速約8km)から戻ってくるので、大気圏で、ものすごい熱が出ます。
- 途中の姿勢が特殊: 宇宙船は、横向きで空気を受けて減速し、最後に、エンジンを点火して、縦に起き上がります。この「振り向き」で、数秒のうちに、向きを90度変えます。
- 一度も実績がない: ブースターのキャッチは、過去の飛行(フライト5、7、8)で成功していますが、宇宙船のキャッチは、まだ試されたことがありません。
なぜ、わざわざ「つかまえる」のか
理由は、3つあります。
1. 脚を省いて、軽くするため。 脚と、脚を動かす装置は、重いです。スターシップでは、それを塔のアームに肩代わりさせます。軽くなった分、荷物を多く運べます。
2. すぐに、また飛ばすため。 海に着水すると、塩水で傷みます。塔のアームの上なら、そのまま燃料を入れて、点検をして、次の発射に回せます。SpaceXが目指しているのは、飛行機のような、短い間隔の運用です。
3. 発射台の上で、完結させるため。 回収した機体を、船や陸路で運ぶ手間が、なくなります。
これがうまくいくと、ロケット全体が「使い捨て」から「何度も飛ぶ乗り物」に変わります。ただし、これは、あくまで設計の目標です。実際に、どのくらいの回数・間隔で飛べるかは、これから、飛行ごとの実績で、確かめられていきます。
これまでの流れ
- 2024年10月13日(フライト5): スーパーヘビーが、初めて塔でつかまえられました。
- フライト7、8: ブースターの塔キャッチが、くり返されました。
- 2026年9月28日(フライト14): スターシップが、初めて軌道に到達する飛行をして、26機のStarlink V3衛星を放出したと伝えられています。
- 2026年10月20日: フライト15の計画として、ブースターと宇宙船の両方のキャッチが示されました。
ぼくの考えだけど、ブースターのキャッチが「何度も成功してきた」ことが、今回、宇宙船のキャッチに進む自信になっているのだと思います。ただし、宇宙船のほうは、再突入の熱と、振り向きの動きが加わるので、同じ難しさではありません。最初の試みで、うまくいかない可能性も、十分あります。
知っておくと使える、見るときのポイント
- 「キャッチ成功」と「再使用」は別の話: つかまえられても、そのまま、すぐ飛べるとは限りません。点検で見つかることもあります。
- ブースターと宇宙船は、別々に評価する: どちらかだけ成功する、という結果も、十分ありえます。
- 日付は動く: スターシップの打ち上げ日は、許可や天候、整備で、よく前後します。「来月」は、目安として受け取るのが安全です。
つづきの問い
もし、宇宙船まで毎回つかまえられるようになったら、ロケットの打ち上げは、飛行機の運航のように「時刻表」で語られるようになるのでしょうか。次の飛行で、その最初の手がかりが見えるかもしれません。
次に読む
- スターシップとは? 全体像をつかむ(準備中)
- ファルコン9とスターシップの違い(準備中)
- ロケットは本当に高いのか?
- ロケットが逆立ちして降りてきた日
出典
- Teslarati「SpaceX showcases exactly how it plans to catch Starship next month」(2026年10月20日) → https://www.teslarati.com/spacex-starship-tower-catch-flight-15/
- TeslaNorth「SpaceX Will Try to Catch Both Starship Stages on Flight 15 Next Month」(2026年10月20日、SpaceXの第3四半期の説明会での発言を引用) → https://teslanorth.com/2026/10/20/spacex-starship-flight-15-catch-simulation/
- Advanced Television「Starship #15 scheduled for November with dual catch」(2026年10月20日) → https://www.advanced-television.com/2026/10/20/starship-15-scheduled-for-november-with-dual-catch/
- SpaceX「Starship」公式ページ → https://www.spacex.com/vehicles/starship
※報道ベースの記事です(2026-10-21時点)。SpaceXの説明会での発言は、複数の専門メディアの報道をもとにしています。打ち上げ日(11月8日とする報道あり)とFAAの許可の状況は、公式には確定していません。
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