スターシップ15回目の飛行、ブースターと宇宙船の「2機同時キャッチ」に挑戦へ。塔でロケットをつかまえるしくみ

確認日 2026年10月21日 / 読む時間 約7分

目次
  1. 3行まとめ
  2. 前提知識:ロケットは、なぜ「使い捨て」だと高いのか
  3. 何が起きたか
  4. 「塔でつかまえる」しくみ
  5. なぜ、わざわざ「つかまえる」のか
  6. これまでの流れ
  7. 知っておくと使える、見るときのポイント
  8. つづきの問い
  9. 次に読む
  10. 出典

SpaceXは2026年10月20日、スターシップのフライト15で、ブースター(スーパーヘビー)と宇宙船(シップ)の両方を、発射台の塔のアーム(通称「チョップスティック」)でつかまえる計画だと説明しました。ブースターの塔キャッチは過去に成功していますが、宇宙船のキャッチはまだ一度もありません。

3行まとめ

  • 10月20日(米国時間)、SpaceXはスターシップの次の飛行(フライト15)を「来月」とし、ブースターと宇宙船の両方を、塔でつかまえる計画だと述べました。
  • ブースターを塔でつかまえたことは、これまでにあります。宇宙船をつかまえたことは、まだありません。
  • 両方をつかまえられると、ロケット全体が発射場に戻り、点検して、すぐ再び飛ばせる、という再使用の形に近づきます。

前提知識:ロケットは、なぜ「使い捨て」だと高いのか

飛行機は、同じ機体で何千回も飛びます。ところが、昔のロケットは、1回飛ぶと、海に落ちて、使い捨てでした。飛行機が1回の飛行ごとに捨てられる世界を想像してみてください。運賃は、機体の値段そのものになってしまいます。

ロケットの費用は、燃料よりも、「機体を作る費用」のほうがずっと大きいとされています。スターシップが使う燃料は、液体メタンと液体酸素で、重さあたりの値段は安い部類です。高いのは、エンジン、タンク、制御装置など、「作るのに手間がかかるもの」です。だから、機体を回収して、もう一度飛ばせれば、1回あたりの費用は大きく下がります。この考え方は、ロケットは本当に高いのか?で、数字で整理しています。

回収には、いくつかの方法があります。パラシュートで海に降ろす方法、脚を出して地面に立つ方法(ファルコン9の方法)、そして、スターシップが目指す「塔でつかまえる」方法です。脚で立つ方法は、脚そのものが重くなります。ロケットは、1kg重くなるごとに、運べる荷物が減るので、脚を省けるなら、省きたいのです。

何が起きたか

SpaceXは、2026年10月20日(米国時間)の決算の説明会(ウェブ中継)で、スターシップの今後の計画に触れました。複数の専門メディアの報道によると、イーロン・マスク氏は、フライト15について「来月に行うと見込んでいて、ブースターと宇宙船の両方をつかまえる試みをする」という趣旨を述べました。成功の見通しについては、「最初の飛行で成功は保証されないが、次の飛行で成功する可能性のほうが高い」という趣旨を述べたと伝えられています。

説明会では、約80秒のアニメーションも流されました。地上から塔のアームを見上げる場面から始まり、宇宙船が、横向き(腹を下にした姿勢)で降りてきて、翼のようなフラップで姿勢を整え、最後に垂直に起き上がって、塔のアームの間に収まる、という流れでした。

報道によると、フライト15に割り当てられた宇宙船は「Ship 42」です。2026年9月には、スターボースの第2発射台(パッド2)のアームが、この宇宙船を持ち上げて、キャッチの位置に置く模擬の作業を行ったと伝えられています。

打ち上げの日付は、SpaceXからは、まだ確定した発表がありません。一部のメディアは11月8日と伝えていますが、これは報道ベースの日付です。FAA(米連邦航空局)の許可については、SpaceX側が、塔でのキャッチを含む許可を見込む、と説明していると伝えられています。

「塔でつかまえる」しくみ

スターシップは、2つの部分でできています。

部分役割回収のしかた
スーパーヘビー(1段目のブースター)最初の数分で、宇宙の入口まで押し上げる発射場に戻って、塔でつかまえる(過去に成功あり)
スターシップ(上段の宇宙船)軌道まで行き、荷物を運ぶ大気圏に再突入して、発射場に戻り、塔でつかまえる(フライト15で初挑戦の予定)

発射台の塔には、2本の大きなアームがあります。形が「箸」に似ているので、SpaceXは「チョップスティック」と呼んでいます。ロケットは、塔の横に、ぴたりと降りてきて、アームに、側面の「つかむ場所」をひっかけて、止まります。脚は、いりません。

ここで、いちばんむずかしいのは、「位置の精度」です。ブースターは、直径9m、高さ70m級の巨大な円筒です。それを、塔のアームの幅の中に、数十センチ単位の精度で、ぴたりと降ろす必要があります。エンジンの噴射で、横にも、上下にも、細かく調整します。もし外れれば、塔や発射台を傷つける危険もあります。

宇宙船の場合は、さらに難題があります。

  1. 速さが段違い: ブースターは、宇宙の入口までしか行かないので、戻る速さは比較的ゆるやかです。宇宙船は、軌道の速さ(秒速約8km)から戻ってくるので、大気圏で、ものすごい熱が出ます。
  2. 途中の姿勢が特殊: 宇宙船は、横向きで空気を受けて減速し、最後に、エンジンを点火して、縦に起き上がります。この「振り向き」で、数秒のうちに、向きを90度変えます。
  3. 一度も実績がない: ブースターのキャッチは、過去の飛行(フライト5、7、8)で成功していますが、宇宙船のキャッチは、まだ試されたことがありません。

なぜ、わざわざ「つかまえる」のか

理由は、3つあります。

1. 脚を省いて、軽くするため。 脚と、脚を動かす装置は、重いです。スターシップでは、それを塔のアームに肩代わりさせます。軽くなった分、荷物を多く運べます。

2. すぐに、また飛ばすため。 海に着水すると、塩水で傷みます。塔のアームの上なら、そのまま燃料を入れて、点検をして、次の発射に回せます。SpaceXが目指しているのは、飛行機のような、短い間隔の運用です。

3. 発射台の上で、完結させるため。 回収した機体を、船や陸路で運ぶ手間が、なくなります。

これがうまくいくと、ロケット全体が「使い捨て」から「何度も飛ぶ乗り物」に変わります。ただし、これは、あくまで設計の目標です。実際に、どのくらいの回数・間隔で飛べるかは、これから、飛行ごとの実績で、確かめられていきます。

これまでの流れ

  • 2024年10月13日(フライト5): スーパーヘビーが、初めて塔でつかまえられました。
  • フライト7、8: ブースターの塔キャッチが、くり返されました。
  • 2026年9月28日(フライト14): スターシップが、初めて軌道に到達する飛行をして、26機のStarlink V3衛星を放出したと伝えられています。
  • 2026年10月20日: フライト15の計画として、ブースターと宇宙船の両方のキャッチが示されました。

ぼくの考えだけど、ブースターのキャッチが「何度も成功してきた」ことが、今回、宇宙船のキャッチに進む自信になっているのだと思います。ただし、宇宙船のほうは、再突入の熱と、振り向きの動きが加わるので、同じ難しさではありません。最初の試みで、うまくいかない可能性も、十分あります。

知っておくと使える、見るときのポイント

  • 「キャッチ成功」と「再使用」は別の話: つかまえられても、そのまま、すぐ飛べるとは限りません。点検で見つかることもあります。
  • ブースターと宇宙船は、別々に評価する: どちらかだけ成功する、という結果も、十分ありえます。
  • 日付は動く: スターシップの打ち上げ日は、許可や天候、整備で、よく前後します。「来月」は、目安として受け取るのが安全です。

つづきの問い

もし、宇宙船まで毎回つかまえられるようになったら、ロケットの打ち上げは、飛行機の運航のように「時刻表」で語られるようになるのでしょうか。次の飛行で、その最初の手がかりが見えるかもしれません。

次に読む

出典

※報道ベースの記事です(2026-10-21時点)。SpaceXの説明会での発言は、複数の専門メディアの報道をもとにしています。打ち上げ日(11月8日とする報道あり)とFAAの許可の状況は、公式には確定していません。

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