2008年、テスラとスペースXが同時に倒れかけた年 ― クリスマスイブ午後6時の資金調達

確認日 2026年10月11日 / 読む時間 約9分

目次
  1. 前半戦:スペースXの、崖っぷち
  2. もう1つの会社:テスラ
  3. 11月、資金調達の承認
  4. 年末:現金は、約900万ドル
  5. 12月23日:NASAからの知らせ
  6. 12月24日、午後6時
  7. なぜ、この年が大切なのか
  8. よくある質問
  9. まとめ
  10. 出典(確認日 2026-10-11)

2008年は、スペースXが4回目の打ち上げで初めて軌道に届いた年であり、同時に、テスラの資金が底をつきかけた年でもありました。12月23日にはNASAがスペースXと大型契約を結び、翌24日、テスラは年末の資金調達をぎりぎりで完了した、と報じられています。

2008年の重要な日付。8月6日スペースXが2000万ドルの調達と報じられる。9月28日ファルコン1が軌道に到達。10月15日マスクがテスラのCEOに就任。11月2日テスラの4000万ドルの資金調達を承認。12月23日NASAがスペースXと契約。12月24日テスラが年末の資金調達を完了
図1:2008年、2つの会社に起きたこと(AI生成のイメージ。出来事は報道ベース)。

2008年12月24日。クリスマスイブの、午後6時。

イーロン・マスクは、後年、この時刻をはっきりと書いています。「あと2日遅れていたら、給料を払えなくなるところだった」。(本人のSNS投稿を報道が引用したもので、当時の記録で確認したわけではありません。)

2008年のマスクは、ふつうの経営者が1社でも抱えきれない重荷を、2社分、同時に背負っていました。ロケット会社と、電気自動車会社。しかも、世界は、金融危機のただなか。

この記事では、その1年を、日付を追って見ていきます。

前半戦:スペースXの、崖っぷち

2008年の前半は、スペースXにとって、苦しい時間でした。8月2日、ファルコン1の3回目の打ち上げが失敗。3回連続の失敗です(詳しくは前の記事)。

それでも、8月6日、ベンチャーキャピタルのFounders Fundから2,000万ドルを調達したと報じられました。失敗の、わずか4日後です。

そして、9月28日。4回目の打ち上げで、ファルコン1は、はじめて地球周回軌道に届きました。スペースXは、ひとまず、崖っぷちから生還します。

もう1つの会社:テスラ

ところが、同じ2008年、もう1つの会社が、静かに追い込まれていました。電気自動車メーカー、テスラです。

10月15日。報道によると、テスラは次の発表をしました。

当時のロサンゼルス・タイムズは、この発表を、世界的な信用収縮(クレジット・クランチ)の影響として報じています。お金を貸してくれる人が、いっせいに消えた時代でした。

2008年の2つの会社。スペースXは3回目の失敗、4回目の成功、NASAとの契約。テスラは10月にマスクがCEOに就任して量産を延期、11月に資金調達を承認、年末の現金が約900万ドルまで逼迫、12月24日に資金調達を完了
図2:2008年の2社の動き(AI生成のイメージ。出来事は報道・公式発表ベース)。

11月、資金調達の承認

11月2日。テスラの取締役会は、約4,000万ドルの資金調達を承認しました(テスラ自身の公式発表による)。転換社債という形の資金調達で、主な使い道は、ロードスター(最初の量産車)の製造を加速することだとされました。

ただし、この承認は、「お金が入った」という意味ではありません。承認されたあと、実際に出資してくれる人が現れて、はじめて資金になります。

年末:現金は、約900万ドル

2008年の終わり。テスラの現金は、約900万ドルまで逼迫していたと、のちに報じられています(TechCrunchの2009年の記事)。

自動車の開発や生産には、毎月、大きなお金が出ていきます。900万ドルというのは、会社を動かし続けるには、あまりにも薄い余裕でした。

12月23日:NASAからの知らせ

その少し前、12月23日。NASAが、国際宇宙ステーション(ISS)への物資の輸送を、スペースXに任せる契約を発表しました。

スペースXにとって、これは、会社の生死を分ける知らせだったと考えられます。ただし、ここで1つ、気をつけたいことがあります。

数字の読み方

16億ドルは、契約の総額です。契約が決まった12月に、その全額が、現金でスペースXに入ったわけではありません。ロケットを何度も飛ばし、荷物を運んでいく、長い期間にわたって支払われていくお金です。

契約総額と現金の違い。NASAの契約は12便で約16億ドルの契約総額。2008年12月に16億ドルの現金が入ったわけではなく、長い期間をかけて支払われる
図3:契約の総額と、手元の現金は別(AI生成のイメージ)。

12月24日、午後6時

そして、12月24日。

テスラは、年末最後の資金調達のラウンドを、完了させたと報じられています。マスクは、後年、これを次のように振り返ったとされます(本人のSNS投稿を報道が引用)。

ここで、注意が必要です。この12月24日の資金調達の中身(誰が、いくら出したのか)は、当時の記録で確認できていません。 11月に承認された約4,000万ドルの枠と、12月24日に完了したラウンドが、どう関係するのかも、分かっていません。そのため、「12月24日に4,000万ドルが入金された」と、断定はできません。

マスクは、別の場で、2008年を「悪夢の年」と呼んだと報じられています。スペースXは、3回打って、3回とも失敗していた。テスラの資金調達も、崩壊寸前だった。世界は、金融危機の渦中だった。

なぜ、この年が大切なのか

筆者の読み解き(確認した事実ではありません)

2008年は、「失敗しても、まだ次がある」という状況とは、正反対の年でした。ロケットは3回失敗し、会社の現金は底をつき、世界の景気は冷え込んでいた。そこで、2社とも、倒れずに年を越した。この事実は、のちの2社の歩みを考えるとき、大きな前提になります。ただし、「どう乗り切ったのか」の細部は、公開された資料では、まだ分かっていないことが多いです。

次の記事からは、この危機を越えた2社が、どう動き出していくのかを見ていきます。

よくある質問

2008年に、マスクは2社の資金を、どう分けたのですか?

確認できていません。マスク本人の証言はありますが、2社への配分額の内訳は、資料では確認できていません。

NASAの契約で、スペースXは、助かったのですか?

契約の総額は約16億ドルと報じられていますが、それは長い期間をかけて支払われるお金です。12月の時点で、手元の現金がどれだけ増えたかは、確認できていません。

テスラのCEOは、はじめからマスクだったのですか?

いいえ。2008年10月に、それまでのCEOだったZe'ev Droriに代わって、マスクが就任したと報じられています。

まとめ

次の記事:危機を越えた2社は、どう動き出したのか。電気自動車Model Sと、宇宙船Dragonへ。

出典(確認日 2026-10-11)

この記事は、科学技術と企業の歴史の学習を目的としたもので、投資の助言ではありません。事実と筆者の読み解きは、区別して書いています。図はAIで生成したイメージです。