電気自動車は、どうやって走る?電池→インバーター→モーターの流れを、図でやさしく解説

確認日 2026年10月13日 / 読む時間 約9分

目次
  1. 結論:電池 → インバーター → モーター
  2. 1. 電池:電気を、ためておく場所
  3. 2. インバーター:直流を、交流に変える
  4. 3. モーター:電気を、回転に変える
  5. 全体をつなげる
  6. よくある質問
  7. まとめ
  8. 出典(確認日 2026-10-13)

EVは、電池にためた直流の電気を、インバーターで交流に変えて、モーターに送り、モーターが回転を作って走ります。ブレーキのときは、この流れが逆になり、モーターが発電機になって、電池に電気を戻します(回生ブレーキ)。

EVの電気の流れ。電池(直流)→インバーター(直流を交流に変える)→モーター(回転を作る)→車輪。ブレーキのときは、逆向きに電気が戻る
図1:EVの、電気の流れ(AI生成のイメージ。米国エネルギー省AFDCなどによる)。

前回は、EVとガソリン車の、いちばん大きな違いを見ました。今回は、EVの心臓部、電気の流れを、順番にたどります。

結論:電池 → インバーター → モーター

EVの電気の流れは、3つの部品で言えます。

  1. 電池:電気をためる。
  2. インバーター:電池の電気を、モーターが使える形に変える。
  3. モーター:電気で、回転を作る。

ブレーキのときは、向きが逆になります。モーターが発電機になり、電気を電池に戻します。

1. 電池:電気を、ためておく場所

EVの電池は、リチウムイオン電池です。ワシントン大学のClean Energy Instituteの説明で、しくみを見てみます。

  • 電池の中には、負極(アノード)と正極(カソード)があり、間を電解質が満たしています。両極の間には、セパレーターという、電極どうしが触れないようにする壁があります。リチウムイオンは、この壁を通れます。
  • 負極は、ふつうグラファイト(黒鉛)。リチウムは、炭素の層のすきまに入って、ためられます。
  • 正極の材料は、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウムなど、いくつかあります。
  • 放電(電気を使うとき)は、負極のリチウムが電子を手放して、イオンになります。イオンは電解質の中を正極へ進み、電子は、外の回路を通って正極へ向かいます。この電子の流れが、電流です。

同じ説明によると、リチウムは原子が軽くて小さいので、高い電圧と、軽さのわりに多くの電気をためられます(1セル最大3.6V、エネルギー密度は最大330Wh/kgと書かれています。これは、ページが紹介する、電池全般の数字で、テスラの電池の数字ではありません)。

Model 3の電池

テスラのManualで確認できたことは、次のとおりです(シンガポール版)。

項目内容
高電圧電池液冷のリチウムイオン電池、公称355V DC
低電圧電池15.5V、6.9Ah

高電圧電池が、走るための電池です。低電圧電池は、ライトや画面などの、小さな電気のためのものです。

高電圧の電気から、低電圧の電気をつくる装置を、DC/DCコンバーターと言います。米国エネルギー省のAFDCは、この装置を「駆動用電池の高電圧DCを、補機用の電気に変えるもの」と説明しています。

2. インバーター:直流を、交流に変える

電池が出す電気は、直流(DC)。いつも同じ向きに流れる電気です。

一方、EVの多くのモーターは、交流(AC)で回ります。交流は、向きが、たえず入れ替わる電気です。

インバーターは、この橋渡しをします。Bosch Semiconductorsの用語集は、トラクションインバーターを「電池の直流を、3相の交流に変えて、モーターを駆動する、パワーエレクトロニクスの装置」と説明しています。

米国エネルギー省のAFDCは、こう書いています。パワーエレクトロニクス・コントローラーは、モーターの速さと、モーターが出すトルク(回す力)を、制御する。

つまり、アクセルを踏む量を、電気の出し方に変えるのが、インバーターです。

ブレーキのときは、逆になる

Boschは、インバーターが「電力の流れを逆にすることで、回生ブレーキを可能にする」と書いています。減速のとき、モーターは発電機になり、そこでできた交流を、インバーターが直流に直して、電池に戻します。

補足:炭化ケイ素(SiC)

インバーターの中の半導体には、炭化ケイ素(SiC)を使うものがあります。Boschは、SiCの半導体を、ふつうのシリコンより、高いスイッチング周波数と高い温度で使える、と説明しています(Boschの製品についての説明です)。

テスラのModel 3のインバーターに、SiCが使われている、という報道はあります(2018年に、STMicroelectronicsのSiCモジュールを使った、という内容のティアダウン報告が紹介されました)。ただし、テスラの公式マニュアルには、この記載がありません。この記事では、「報道がある」までにとどめ、断定はしません。

インバーターの役割。電池の直流を、3相の交流に変えて、モーターに送る。アクセルの踏み方に合わせて、速さとトルクを制御する。ブレーキのときは、流れが逆になる
図2:インバーターの役割(AI生成のイメージ。Bosch Semiconductorsの用語集による)。

3. モーター:電気を、回転に変える

モーターは、電気から回転を作ります。Model 3のマニュアルでは、次の2種類が確認できます。

位置モーターの種類
後ろAC永久磁石同期モーター(液冷)
前(AWDの車)ACインダクション(誘導)モーター(液冷)
  • 永久磁石同期モーター:回る部分に、強い磁石が入っています。
  • 誘導モーター:回る部分に、磁石がありません。外側から作った回転する磁界によって、電気が誘導されて回ります。

なぜ、Model 3の後ろは、永久磁石なのでしょうか。テスラの主任モーター設計者、Konstantinos Laskaris氏は、2018年にシカゴの展示会で、こう話したと、Electrekが伝えています(講演の日付は、記事に書かれていません)。

Laskaris氏の言葉(記事の引用)

永久磁石の機械には、磁石による予備励磁の利点がある。永久磁石のモーターのほうが、われわれの「コスト最小化の関数」を、よく解いた。モーターのコスト、航続距離、電池のコストの、トレードオフだ。

つまり、コストと航続距離のバランスで選んだ、という説明です。ただし、Model 3の細かいモーター型式は、記事も、はっきりしないとしています。また、今のModel 3やModel Yの最新の構成は、この記事では確認していません。

全体をつなげる

電池からモーターまでの全体図。高電圧電池(355V)→インバーター→モーター(後ろ:永久磁石同期、前:誘導)→1段の固定ギア→車輪。電池からDC/DCコンバーターを通して、低電圧電池につなぐ
図3:Model 3の電気の流れ(AI生成の、簡略化したイメージ。インバーターの数や配置は、実際と違う場合があります。テスラのマニュアルと、AFDCによる)。

AFDCが挙げる、EVの主な部品を、役割ごとにまとめます。

部品役割
駆動用電池パックモーターが使う電気をためる
車載充電器充電ポートから入る交流を、直流にして、電池に入れる
パワーエレクトロニクス・コントローラーモーターの速さとトルクを制御する
駆動モーター電池の電気で、車輪を動かす
DC/DCコンバーター高電圧の直流を、補機用の電気に変える
熱システムモーターやパワーエレクトロニクスを、適温に保つ

(熱のしくみは、第2部の後の話で、くわしく見ます。)

筆者の読み解き(確認した事実ではありません)

ガソリン車では、燃やす→回す、という「熱」が中心でした。EVでは、「電気を、形を変えながら運ぶ」ことが中心になっているようです。インバーターは、その形を変える係で、ここの性能が、走りの味やエネルギーの無駄に関わりそうです。ただし、具体的にどれだけ効くかは、確認できていません。

よくある質問

EVの電池は、なぜ「直流」なのですか?

電池は、化学反応で、いつも同じ向きに電子を流すしくみだからです(UWの説明による、放電のしくみ)。交流が必要なモーターのために、インバーターで変えています。

モーターは、永久磁石と誘導で、どちらがいいのですか?

一概には言えません。Laskaris氏の説明では、コスト、航続距離、電池のコストの、トレードオフで決まります。Model 3でも、後ろは永久磁石、前は誘導(AWDの車)と、使い分けられています。

インバーターは、SiC(炭化ケイ素)ですか?

報道はありますが、テスラの公式資料では、確認できていません。この記事では、断定しません。

電池の寿命や、何km走れるかは?

この記事では、確認していません。別の記事で、扱います。

まとめ

  • EVの電気の流れは、電池 → インバーター → モーター → 車輪。ブレーキのときは、逆向きになり、電池に電気が戻る。
  • 電池は、リチウムイオン。放電のとき、リチウムイオンが負極から正極へ動き、電子が外の回路を流れる(UW)。
  • Model 3:高電圧電池は液冷、公称355V。低電圧電池は15.5V、6.9Ah(テスラのマニュアル)。
  • インバーターは、電池の直流を、3相の交流に変える。モーターの速さとトルクを制御し、回生では、流れを逆にする(Bosch、AFDC)。
  • Model 3のモーター:後ろ=永久磁石同期、前(AWD)=誘導(マニュアル)。後ろの永久磁石は、コストと航続距離の兼ね合いで選んだ、と設計者が語っている(Electrek、2018)。
  • SiCについては、報道はあるが、テスラの公式資料では未確認。

次の記事:モーターが作った回転が、どうやってタイヤまで届くのか、「力の流れ」を順番に見ていきます(準備中)。

出典(確認日 2026-10-13)

この記事は、科学技術の学習を目的としたもので、投資の助言ではありません。事実と筆者の読み解きは、区別して書いています。図はAIで生成したイメージです。