EVとガソリン車のいちばん大きな違いは、ガソリン車には「燃料を燃やして熱を出し、その熱で動力を作る」工程があり、EVにはないことです。米国エネルギー省のページによると、動力のしくみで失われるエネルギーは、EVが15〜20%、ガソリンエンジンが64〜75%とされています。

ここからは、第2部です。第0部で歴史を、第1部で「考え方」を学びました。この第2部では、テスラの電気自動車の中身を、4つの流れ(電気・力・熱・情報)で、順番に見ていきます。
最初に、いちばんの土台になる問いです。電気自動車は、ガソリン車と、何が違うのでしょうか。
結論:「熱を回す工程」があるか、ないか
ガソリン車は、ガソリンを燃やして、その熱で、動力を作ります。燃やす→爆発の力でピストンを動かす→回転にする→ギアで速さを変える→タイヤに伝える、という長い道のりです。
電気自動車(EV)は、電池の電気で、モーターを直接回します。燃やす工程が、ありません。
この、「熱を回す工程があるか、ないか」が、効率も、部品も、整備も、ほとんどの違いのもとです。
エネルギーは、どれだけ無駄になる?
米国エネルギー省(DOE)と環境保護庁(EPA)が運営するFuelEconomy.govには、EVの効率の説明があります。
- EVの、車輪に届くエネルギーの割合は、市街地の「止まって走る」運転で60〜66%、高速道路で71〜73%。
- 動力のしくみで失われるエネルギーは、EVの電動ドライブシステムが15〜20%。一方、ガソリンエンジンは64〜75%。
つまり、ガソリン車は、燃料の持つエネルギーの、半分以上が、熱として、すてられていることになります。
ただし、注意があります。同じページの文章と図で、市街地の数字が、少し食い違っています(図は54〜62%)。また、「車輪に届く割合」と「損失の割合」は、数える範囲が同じとは限りません。そのため、ここでは、だいたいの大きさの違いとして読んでください。
動力の「道のり」を比べる

- EV:電池 → インバーター(電池の直流の電気を、モーター用の交流に変える装置)→ モーター → 減速ギア → 車輪。
- ガソリン車:燃料タンク → 燃料を送る装置 → エンジン(燃やして回転にする)→ 変速機(速さに合わせて、ギアを切り替える)→ 車輪。ほかに、点火、吸気、排気、潤滑、冷却の装置も必要です。
EVには、エンジンがないので、燃料を噴射する装置、火花を飛ばす装置、排気ガスを処理する装置は、いりません。
部品の数については、S&P Global Mobilityの2023年5月1日の記事(Michael Robinet氏)が、「内燃機関のパワートレインには、数千の動く部品があるが、バッテリー電気自動車には、数十個しかない」と書いています。ただし、これは動力まわりの動く部品の比較で、車全体の部品数ではありません。
テスラModel 3の場合
テスラ公式のModel 3のオーナーズマニュアル(シンガポール版の「Subsystems」)で、確認できることは、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 後ろのモーター | AC永久磁石同期モーター、液冷、可変周波数ドライブ |
| 前のモーター(AWDの車) | ACインダクション(誘導)モーター、液冷、可変周波数ドライブ |
| トランスミッション | 1段の固定ギア(Single speed fixed gear) |
| ギアの比 | 9.03:1 |
| 高電圧電池 | 液冷のリチウムイオン電池、公称355V DC |
| ブレーキ | 4輪のABSなどに加え、アクセルペダルで操作する回生ブレーキ |
ガソリン車は、低速から高速まで走るために、何段ものギアを切り替えます。Model 3は、ギアが1段だけです。モーターは、低い回転でも力を出せるため、何段もの変速が、いらないのです(この理由は、一般的な説明で、この表の出典の記述ではありません)。

なお、Teslaは、年式・グレード・地域によって、モーターの構成を変えることがあります。ここに書いたのは、確認したマニュアル(シンガポール版)の内容です。
回生ブレーキ:ブレーキで、発電する
EVには、ガソリン車にない、大きな特徴があります。回生ブレーキです。
FuelEconomy.govは、こう説明しています。ブレーキをかけると、車の勢いで、モーター兼発電機が回り、電気ができて、電池にたくわえられる。その電気は、あとで、車輪を動かすために使われます。
ふつうの摩擦ブレーキは、車の運動エネルギーを、熱にして、すててしまいます。EVの回生ブレーキは、その一部を、電気として取り戻します。同じページは、この取り戻したエネルギーも数えると、効率は、市街地で94%を超えることがある、とも書いています(ただし、同じページの図の数字とは、食い違いがあります)。
「ガソリン車は、エネルギーの半分以上を熱としてすてる」「EVは、ブレーキの熱の一部まで、取り戻す」。この2つが、EVの効率の差の、中心にあるように見えます。ただし、実際の車の、1回ごとの走行では、条件しだいで、数字は大きく変わります。
よくある質問
EVは、ガソリン車より、何倍、効率がいいのですか?
「何倍」とは、言い切れません。DOEのページは、損失の割合(EVの電動ドライブ15〜20%、ガソリンエンジン64〜75%)と、EVの車輪に届く割合(60〜73%)を書いています。ガソリン車の「車輪に届く割合」は、このページから、同じ形では確認できていません。
EVの部品は、ガソリン車の何分の1ですか?
車全体の部品数を、同じ条件で比べた公的な資料は、確認できていません。「パワートレインの動く部品が、数千対、数十」という、S&P Global Mobilityの記事の言葉があります(動力まわりだけの話です)。
EVは、整備が、ぜんぜん要らないのですか?
エンジンオイルの交換や、点火プラグなどは、エンジンがないので、不要です。ただし、電池の冷却液の交換周期などは、車種しだいで、この記事では確認できていません。「整備が要らない」とは、言い切れません。
まとめ
- EVとガソリン車の、いちばんの違いは、「燃料を燃やして、熱で動力を作る工程」が、あるか、ないか。
- 米国エネルギー省のページ:動力のしくみの損失は、EVの電動ドライブが15〜20%、ガソリンエンジンが64〜75%。EVの、車輪に届く割合は、市街地で60〜66%、高速道路で71〜73%(文章と図で、数字に食い違いあり)。
- 動力まわりの動く部品は、内燃機関で数千、BEVで数十(S&P Global Mobility、2023年。車全体の部品数ではない)。
- Model 3は、1段の固定ギア(9.03:1)、後ろは永久磁石同期モーター、液冷の電池(公称355V)(テスラのマニュアル)。
- 回生ブレーキは、減速のときに、モーターが発電機になって、電気を電池に戻す。
次の記事:EVの心臓部、「電池→インバーター→モーター」の、電気の流れを、順番に見ていきます(準備中)。
出典(確認日 2026-10-13)
- FuelEconomy.gov(米国エネルギー省・環境保護庁)「All-Electric Vehicles」: https://www.fueleconomy.gov/feg/atv-ev.shtml
- S&P Global Mobility(Michael Robinet、2023年5月1日)「As the industry goes electric, expect a shakeout among internal-combustion suppliers」: https://www.mobilityglobal.com/en-us/automotive-insights/blog/fuel-for-thought-as-the-industry-goes-electric-expect-shakeout
- Tesla「Model 3 Owner's Manual: Subsystems」(シンガポール版): https://www.tesla.com/ownersmanual/model3/en_sg/GUID-E414862C-CFA1-4A0B-9548-BE21C32CAA58.html
この記事は、科学技術の学習を目的としたもので、投資の助言ではありません。事実と筆者の読み解きは、区別して書いています。図はAIで生成したイメージです。