電気自動車とガソリン車は、何が違う?しくみと効率を、図でやさしく解説

確認日 2026年10月13日 / 読む時間 約8分

目次
  1. 結論:「熱を回す工程」があるか、ないか
  2. エネルギーは、どれだけ無駄になる?
  3. 動力の「道のり」を比べる
  4. テスラModel 3の場合
  5. 回生ブレーキ:ブレーキで、発電する
  6. よくある質問
  7. まとめ
  8. 出典(確認日 2026-10-13)

EVとガソリン車のいちばん大きな違いは、ガソリン車には「燃料を燃やして熱を出し、その熱で動力を作る」工程があり、EVにはないことです。米国エネルギー省のページによると、動力のしくみで失われるエネルギーは、EVが15〜20%、ガソリンエンジンが64〜75%とされています。

EVとガソリン車の、エネルギーの失われ方の比較。米国エネルギー省のページによると、EVの電動ドライブシステムの損失は15〜20%、ガソリンエンジンの損失は64〜75%
図1:動力のしくみで、エネルギーが失われる割合(AI生成のイメージ。米国エネルギー省のFuelEconomy.govのページによる)。

ここからは、第2部です。第0部で歴史を、第1部で「考え方」を学びました。この第2部では、テスラの電気自動車の中身を、4つの流れ(電気・力・熱・情報)で、順番に見ていきます。

最初に、いちばんの土台になる問いです。電気自動車は、ガソリン車と、何が違うのでしょうか。

結論:「熱を回す工程」があるか、ないか

ガソリン車は、ガソリンを燃やして、その熱で、動力を作ります。燃やす→爆発の力でピストンを動かす→回転にする→ギアで速さを変える→タイヤに伝える、という長い道のりです。

電気自動車(EV)は、電池の電気で、モーターを直接回します。燃やす工程が、ありません。

この、「熱を回す工程があるか、ないか」が、効率も、部品も、整備も、ほとんどの違いのもとです。

エネルギーは、どれだけ無駄になる?

米国エネルギー省(DOE)と環境保護庁(EPA)が運営するFuelEconomy.govには、EVの効率の説明があります。

  • EVの、車輪に届くエネルギーの割合は、市街地の「止まって走る」運転で60〜66%、高速道路で71〜73%。
  • 動力のしくみで失われるエネルギーは、EVの電動ドライブシステムが15〜20%。一方、ガソリンエンジンは64〜75%。

つまり、ガソリン車は、燃料の持つエネルギーの、半分以上が、熱として、すてられていることになります。

ただし、注意があります。同じページの文章と図で、市街地の数字が、少し食い違っています(図は54〜62%)。また、「車輪に届く割合」と「損失の割合」は、数える範囲が同じとは限りません。そのため、ここでは、だいたいの大きさの違いとして読んでください。

動力の「道のり」を比べる

EVとガソリン車の、動力の道のり。EV:電池→インバーター→モーター→減速ギア→車輪。ガソリン車:燃料タンク→燃料ポンプ→エンジン→変速機→車輪(一般的な構成)
図2:動力の道のりの比較(一般的な構成のイメージ。AI生成)。
  • EV:電池 → インバーター(電池の直流の電気を、モーター用の交流に変える装置)→ モーター → 減速ギア → 車輪。
  • ガソリン車:燃料タンク → 燃料を送る装置 → エンジン(燃やして回転にする)→ 変速機(速さに合わせて、ギアを切り替える)→ 車輪。ほかに、点火、吸気、排気、潤滑、冷却の装置も必要です。

EVには、エンジンがないので、燃料を噴射する装置、火花を飛ばす装置、排気ガスを処理する装置は、いりません。

部品の数については、S&P Global Mobilityの2023年5月1日の記事(Michael Robinet氏)が、「内燃機関のパワートレインには、数千の動く部品があるが、バッテリー電気自動車には、数十個しかない」と書いています。ただし、これは動力まわりの動く部品の比較で、車全体の部品数ではありません。

テスラModel 3の場合

テスラ公式のModel 3のオーナーズマニュアル(シンガポール版の「Subsystems」)で、確認できることは、次のとおりです。

項目内容
後ろのモーターAC永久磁石同期モーター、液冷、可変周波数ドライブ
前のモーター(AWDの車)ACインダクション(誘導)モーター、液冷、可変周波数ドライブ
トランスミッション1段の固定ギア(Single speed fixed gear)
ギアの比9.03:1
高電圧電池液冷のリチウムイオン電池、公称355V DC
ブレーキ4輪のABSなどに加え、アクセルペダルで操作する回生ブレーキ

ガソリン車は、低速から高速まで走るために、何段ものギアを切り替えます。Model 3は、ギアが1段だけです。モーターは、低い回転でも力を出せるため、何段もの変速が、いらないのです(この理由は、一般的な説明で、この表の出典の記述ではありません)。

テスラModel 3の仕様。後ろのモーターは永久磁石同期モーター、前のモーターは誘導モーター(AWDの車)。トランスミッションは1段の固定ギアで、ギア比は9.03対1。高電圧電池は液冷のリチウムイオン、公称355V
図3:Model 3の動力まわり(AI生成のイメージ。テスラのオーナーズマニュアルによる)。

なお、Teslaは、年式・グレード・地域によって、モーターの構成を変えることがあります。ここに書いたのは、確認したマニュアル(シンガポール版)の内容です。

回生ブレーキ:ブレーキで、発電する

EVには、ガソリン車にない、大きな特徴があります。回生ブレーキです。

FuelEconomy.govは、こう説明しています。ブレーキをかけると、車の勢いで、モーター兼発電機が回り、電気ができて、電池にたくわえられる。その電気は、あとで、車輪を動かすために使われます。

ふつうの摩擦ブレーキは、車の運動エネルギーを、熱にして、すててしまいます。EVの回生ブレーキは、その一部を、電気として取り戻します。同じページは、この取り戻したエネルギーも数えると、効率は、市街地で94%を超えることがある、とも書いています(ただし、同じページの図の数字とは、食い違いがあります)。

筆者の読み解き(確認した事実ではありません)

「ガソリン車は、エネルギーの半分以上を熱としてすてる」「EVは、ブレーキの熱の一部まで、取り戻す」。この2つが、EVの効率の差の、中心にあるように見えます。ただし、実際の車の、1回ごとの走行では、条件しだいで、数字は大きく変わります。

よくある質問

EVは、ガソリン車より、何倍、効率がいいのですか?

「何倍」とは、言い切れません。DOEのページは、損失の割合(EVの電動ドライブ15〜20%、ガソリンエンジン64〜75%)と、EVの車輪に届く割合(60〜73%)を書いています。ガソリン車の「車輪に届く割合」は、このページから、同じ形では確認できていません。

EVの部品は、ガソリン車の何分の1ですか?

車全体の部品数を、同じ条件で比べた公的な資料は、確認できていません。「パワートレインの動く部品が、数千対、数十」という、S&P Global Mobilityの記事の言葉があります(動力まわりだけの話です)。

EVは、整備が、ぜんぜん要らないのですか?

エンジンオイルの交換や、点火プラグなどは、エンジンがないので、不要です。ただし、電池の冷却液の交換周期などは、車種しだいで、この記事では確認できていません。「整備が要らない」とは、言い切れません。

まとめ

  • EVとガソリン車の、いちばんの違いは、「燃料を燃やして、熱で動力を作る工程」が、あるか、ないか。
  • 米国エネルギー省のページ:動力のしくみの損失は、EVの電動ドライブが15〜20%、ガソリンエンジンが64〜75%。EVの、車輪に届く割合は、市街地で60〜66%、高速道路で71〜73%(文章と図で、数字に食い違いあり)。
  • 動力まわりの動く部品は、内燃機関で数千、BEVで数十(S&P Global Mobility、2023年。車全体の部品数ではない)。
  • Model 3は、1段の固定ギア(9.03:1)、後ろは永久磁石同期モーター、液冷の電池(公称355V)(テスラのマニュアル)。
  • 回生ブレーキは、減速のときに、モーターが発電機になって、電気を電池に戻す。

次の記事:EVの心臓部、「電池→インバーター→モーター」の、電気の流れを、順番に見ていきます(準備中)。

出典(確認日 2026-10-13)

この記事は、科学技術の学習を目的としたもので、投資の助言ではありません。事実と筆者の読み解きは、区別して書いています。図はAIで生成したイメージです。