テスラは、Model Yの車体の後ろ側などを、溶かしたアルミを大きな金型に流し込んで、大きな部品として作っています。ぶつけて壊れたときの修理は、テスラの整備手順に、「決められた切断線で端を切り、新しい部品を接着剤とリベットでつなぐ」方法が載っています。ただし、「ギガキャスティング」はテスラの公式用語ではなく、構造用バッテリーパックの数字も、公式資料では確認できませんでした。

前回までで、電気・力・熱・情報の4つの流れを見ました。今回は、それらを乗せる車体です。テスラの車体は、ふつうの車と、作り方が大きく違うと言われています。
結論:小さな板を溶接する代わりに、大きな部品を一度に作る
ふつうの車の骨組みは、たくさんの鉄やアルミの板を、プレス機で型抜きして、溶接でつないで作ります。
テスラは、車体の一部(Model Yの後ろの床まわりなど)を、溶かしたアルミを大きな金型に流し込んで、大きな部品として作っています。この方法を、ふつうギガキャスティングと呼びます。
ただし、これは、テスラの公式の呼び方ではありません。テスラの整備資料や特許では、「Cast Rear Under Body」(鋳造のリアアンダーボディ)、「Multi-directional unibody casting machine」(多方向のユニボディ鋳造機)といった言葉が使われています。この記事では、分かりやすさのために、「大型の一体鋳造」と呼びます。
1. 鋳造とは何か
鋳造(ちゅうぞう)は、金属を溶かして、型に流し込んで固めて、形を作る方法です。
テスラの特許(米国特許出願公開 US20190217380A1、2019年7月18日公開)は、「車両フレームのための、多方向のユニボディ鋳造機」を、出願人Tesla Inc.として説明しています。要約には、機械の中央に集まる金型が、「車両フレームの一部に対応する、鋳型の空間」を作る、と書かれています。
この特許出願は、データベース上、放棄された状態(2020年11月に、審査官の通知に応答しなかったため)です。つまり、特許としては、成立していません。この記事では、「テスラが、こういう方式の鋳造機を考えた」という資料として紹介します。実際に量産で使っている機械が、この特許のとおりかどうかは、確認できていません。
2. 壊れたときは、どう直すのか
大きな1つの部品は、一部が壊れたら、全部取り替えなければいけないのでは、と心配になります。
テスラのボディリペア手順(整備資料)の「Rear Rail (Small Section)」(Model Y)には、次の流れが書かれています。
- 元の部品に、切断線(cut line)の印をつける。専用の型(カットラインジグ)を当てて、印をつける。
- 元の部品を取り外し、印をつけた切断線で切る。
- 新しい部品を仮に合わせて、隙間を確認する(フレームレールの下は、4mm未満なら許される)。
- 構造用接着剤を、接合面に塗る。
- 高強度の構造用リベット(6.5mm)や、ボルトで固定する。

つまり、壊れた端だけを切り替える手順が、公式に用意されています。ただし、これは、この記事で確認した、Model Yの後ろのフレームレールの手順です。ほかの部位や、ほかの車種で、同じ方法が使えるかは、確認していません。また、損傷しだいで、追加の修理が必要になる、と手順に書かれています。
(検索で見つかった手順のページ題名には、「Cast Rear Under Body (2-Piece)」というものもあります。2つに分けた鋳造部品の車もあるようですが、中身は、この記事では読んでいません。)
3. 構造用バッテリーパック:電池を、車体の骨格にする
もう1つの特徴が、構造用バッテリーパックです。電池の箱を、ただ車体の下に付けるのではなく、車体の一部として、強度を受け持たせる考え方です。
飛行機の翼が、燃料タンクを兼ねる、という例えで説明されることがあります。

ただし、この記事では、次のことを確認できていません。
- テスラが、Battery Day 2020の公式資料で、構造用パックを説明した原文(公式のスライドに、たどり着けませんでした)。
- 「航続距離が14%延びる」「重さが10%減る」といった数字。報道には出ていますが、公式資料で確認できていないので、書きません。
- 4680セルの、構造への関わり方の詳細。
4. 安全性は?
テスラの公式ブログ(2021年12月22日)によると、米国の保険業界の団体IIHSが、Model Yを、最高の評価「Top Safety Pick+」に選びました。同ブログは、Model Yが、IIHSの衝突安全性と前方衝突回避のテストで、最高の評価を得たと書いています。また、2020年には、米国の運輸省の機関NHTSAの試験で、全カテゴリーで5つ星を得た、とも書いています。
ただし、これは、Model Yの結果です。Model 3の受賞や、その後の年については、この記事では確認していません。また、「大きな鋳造部品だから安全だ」という因果関係は、ここでは何も言えません。
部品の数が減ると、作る工程も減りそうです。ただ、テスラが、部品の数や工程が、実際にどれだけ減ったのかを、公式に示した資料は、この記事では確認できていません。「作りやすくなった」「安くなった」と書かれた記事は多いですが、数字は、確かめられていません。
よくある質問
「ギガキャスティング」は、テスラの公式用語ですか?
公式の整備資料や特許では、「Cast Rear Under Body」「Multi-directional unibody casting machine」といった言葉が使われています。「ギガキャスティング」は、一般に使われる呼び方で、公式の用語かどうかは、確認できていません。
鋳造部品が壊れたら、全部取り替えですか?
Model Yの後ろのフレームレールの手順では、切断線で端を切って、新しい部品をつなぐ方法が、公式に載っています。損傷しだいで、全部の取り替えが必要になる場合もあると思われますが、この記事では確認していません。
構造用バッテリーパックで、航続距離はどれだけ延びますか?
公式資料で数字を確認できていません。報道の数字は、書いていません。
Model 3の車体の材料は、何ですか?
この記事では、確認できていません。
まとめ
- テスラは、車体の一部(Model Yの後ろの床まわり)を、溶かしたアルミを型に流し込む大きな鋳造部品で作っています。「ギガキャスティング」は、一般的な呼び方です。
- テスラの特許出願(US20190217380A1、2019年公開)は、多方向のユニボディ鋳造機を説明していますが、放棄された状態です。
- 修理は、切断線で端を切り、構造用接着剤とリベットでつなぐ手順が、公式の整備資料にある(Model Y、後ろのフレームレール)。
- 構造用バッテリーパックは、電池を車体の骨格にする考え方。Battery Dayの公式資料や、効果の数字は、未確認。
- IIHSは、Model Yを「Top Safety Pick+」に選んだ(テスラ公式ブログ、2021年12月)。
次の記事:第2部の最後に、4つの流れ(電気・力・熱・情報)と車体を、1枚の「全体マップ」にまとめます(準備中)。
出典(確認日 2026-10-14)
- 米国特許出願公開 US20190217380A1「Multi-directional unibody casting machine for a vehicle frame and associated methods」(Tesla Inc.、2019年7月18日): https://patents.google.com/patent/US20190217380A1/en
- Tesla Body Repair Procedures「Rear Rail (Small Section)」(Model Y 2025): https://service.tesla.com/docs/BodyRepair/Body_Repair_Procedures/Model_Y_2025/en-us/GUID-85DBAD37-0CF9-47FA-B723-61653310252D.html
- Tesla「Model Y Awarded IIHS Top Safety Pick+」(2021年12月22日): https://www.tesla.com/blog/model-y-awarded-iihs-top-safety-pick
この記事は、科学技術の学習を目的としたもので、投資の助言ではありません。事実と筆者の読み解きは、区別して書いています。図はAIで生成したイメージです。