テスラの車体は、なぜ「大きな1つの塊」で作る?ギガキャスティングと構造用バッテリーパックを、図でやさしく解説

確認日 2026年10月14日 / 読む時間 約9分

目次
  1. 結論:小さな板を溶接する代わりに、大きな部品を一度に作る
  2. 1. 鋳造とは何か
  3. 2. 壊れたときは、どう直すのか
  4. 3. 構造用バッテリーパック:電池を、車体の骨格にする
  5. 4. 安全性は?
  6. よくある質問
  7. まとめ
  8. 出典(確認日 2026-10-14)

テスラは、Model Yの車体の後ろ側などを、溶かしたアルミを大きな金型に流し込んで、大きな部品として作っています。ぶつけて壊れたときの修理は、テスラの整備手順に、「決められた切断線で端を切り、新しい部品を接着剤とリベットでつなぐ」方法が載っています。ただし、「ギガキャスティング」はテスラの公式用語ではなく、構造用バッテリーパックの数字も、公式資料では確認できませんでした。

従来の車体と、テスラの大きな鋳造部品の比較。従来は、たくさんの板金部品を溶接して作る。テスラは、溶かしたアルミを大きな金型に流し込んで、大きな1つの部品にする(AI生成のイメージ)
図1:従来の車体と、大きな鋳造部品(AI生成のイメージ。テスラの資料などによる)。

前回までで、電気・力・熱・情報の4つの流れを見ました。今回は、それらを乗せる車体です。テスラの車体は、ふつうの車と、作り方が大きく違うと言われています。

結論:小さな板を溶接する代わりに、大きな部品を一度に作る

ふつうの車の骨組みは、たくさんの鉄やアルミの板を、プレス機で型抜きして、溶接でつないで作ります。

テスラは、車体の一部(Model Yの後ろの床まわりなど)を、溶かしたアルミを大きな金型に流し込んで、大きな部品として作っています。この方法を、ふつうギガキャスティングと呼びます。

ただし、これは、テスラの公式の呼び方ではありません。テスラの整備資料や特許では、「Cast Rear Under Body」(鋳造のリアアンダーボディ)、「Multi-directional unibody casting machine」(多方向のユニボディ鋳造機)といった言葉が使われています。この記事では、分かりやすさのために、「大型の一体鋳造」と呼びます。

1. 鋳造とは何か

鋳造(ちゅうぞう)は、金属を溶かして、型に流し込んで固めて、形を作る方法です。

テスラの特許(米国特許出願公開 US20190217380A1、2019年7月18日公開)は、「車両フレームのための、多方向のユニボディ鋳造機」を、出願人Tesla Inc.として説明しています。要約には、機械の中央に集まる金型が、「車両フレームの一部に対応する、鋳型の空間」を作る、と書かれています。

注意

この特許出願は、データベース上、放棄された状態(2020年11月に、審査官の通知に応答しなかったため)です。つまり、特許としては、成立していません。この記事では、「テスラが、こういう方式の鋳造機を考えた」という資料として紹介します。実際に量産で使っている機械が、この特許のとおりかどうかは、確認できていません。

2. 壊れたときは、どう直すのか

大きな1つの部品は、一部が壊れたら、全部取り替えなければいけないのでは、と心配になります。

テスラのボディリペア手順(整備資料)の「Rear Rail (Small Section)」(Model Y)には、次の流れが書かれています。

  1. 元の部品に、切断線(cut line)の印をつける。専用の型(カットラインジグ)を当てて、印をつける。
  2. 元の部品を取り外し、印をつけた切断線で切る。
  3. 新しい部品を仮に合わせて、隙間を確認する(フレームレールの下は、4mm未満なら許される)。
  4. 構造用接着剤を、接合面に塗る。
  5. 高強度の構造用リベット(6.5mm)や、ボルトで固定する。
壊れた鋳造部品の修理。決められた切断線で端だけを切り、新しい部品を、構造用接着剤とリベットでつなぐ(AI生成のイメージ。整備手順による)
図2:切断線で端を切り替える修理(AI生成のイメージ)。

つまり、壊れた端だけを切り替える手順が、公式に用意されています。ただし、これは、この記事で確認した、Model Yの後ろのフレームレールの手順です。ほかの部位や、ほかの車種で、同じ方法が使えるかは、確認していません。また、損傷しだいで、追加の修理が必要になる、と手順に書かれています。

(検索で見つかった手順のページ題名には、「Cast Rear Under Body (2-Piece)」というものもあります。2つに分けた鋳造部品の車もあるようですが、中身は、この記事では読んでいません。)

3. 構造用バッテリーパック:電池を、車体の骨格にする

もう1つの特徴が、構造用バッテリーパックです。電池の箱を、ただ車体の下に付けるのではなく、車体の一部として、強度を受け持たせる考え方です。

飛行機の翼が、燃料タンクを兼ねる、という例えで説明されることがあります。

構造用バッテリーパックのイメージ。電池の箱が、車体の床の一部として、強度を受け持つ(AI生成のイメージ。概念図)
図3:構造用バッテリーパックのイメージ(AI生成。概念を表した図で、実際の構造とは異なります)。

ただし、この記事では、次のことを確認できていません。

  • テスラが、Battery Day 2020の公式資料で、構造用パックを説明した原文(公式のスライドに、たどり着けませんでした)。
  • 「航続距離が14%延びる」「重さが10%減る」といった数字。報道には出ていますが、公式資料で確認できていないので、書きません。
  • 4680セルの、構造への関わり方の詳細。

4. 安全性は?

テスラの公式ブログ(2021年12月22日)によると、米国の保険業界の団体IIHSが、Model Yを、最高の評価「Top Safety Pick+」に選びました。同ブログは、Model Yが、IIHSの衝突安全性と前方衝突回避のテストで、最高の評価を得たと書いています。また、2020年には、米国の運輸省の機関NHTSAの試験で、全カテゴリーで5つ星を得た、とも書いています。

ただし、これは、Model Yの結果です。Model 3の受賞や、その後の年については、この記事では確認していません。また、「大きな鋳造部品だから安全だ」という因果関係は、ここでは何も言えません。

筆者の読み解き(確認した事実ではありません)

部品の数が減ると、作る工程も減りそうです。ただ、テスラが、部品の数や工程が、実際にどれだけ減ったのかを、公式に示した資料は、この記事では確認できていません。「作りやすくなった」「安くなった」と書かれた記事は多いですが、数字は、確かめられていません。

よくある質問

「ギガキャスティング」は、テスラの公式用語ですか?

公式の整備資料や特許では、「Cast Rear Under Body」「Multi-directional unibody casting machine」といった言葉が使われています。「ギガキャスティング」は、一般に使われる呼び方で、公式の用語かどうかは、確認できていません。

鋳造部品が壊れたら、全部取り替えですか?

Model Yの後ろのフレームレールの手順では、切断線で端を切って、新しい部品をつなぐ方法が、公式に載っています。損傷しだいで、全部の取り替えが必要になる場合もあると思われますが、この記事では確認していません。

構造用バッテリーパックで、航続距離はどれだけ延びますか?

公式資料で数字を確認できていません。報道の数字は、書いていません。

Model 3の車体の材料は、何ですか?

この記事では、確認できていません。

まとめ

  • テスラは、車体の一部(Model Yの後ろの床まわり)を、溶かしたアルミを型に流し込む大きな鋳造部品で作っています。「ギガキャスティング」は、一般的な呼び方です。
  • テスラの特許出願(US20190217380A1、2019年公開)は、多方向のユニボディ鋳造機を説明していますが、放棄された状態です。
  • 修理は、切断線で端を切り、構造用接着剤とリベットでつなぐ手順が、公式の整備資料にある(Model Y、後ろのフレームレール)。
  • 構造用バッテリーパックは、電池を車体の骨格にする考え方。Battery Dayの公式資料や、効果の数字は、未確認。
  • IIHSは、Model Yを「Top Safety Pick+」に選んだ(テスラ公式ブログ、2021年12月)。

次の記事:第2部の最後に、4つの流れ(電気・力・熱・情報)と車体を、1枚の「全体マップ」にまとめます(準備中)。

出典(確認日 2026-10-14)

この記事は、科学技術の学習を目的としたもので、投資の助言ではありません。事実と筆者の読み解きは、区別して書いています。図はAIで生成したイメージです。