ギガキャスティングの車体部品に使うアルミ合金について、テスラの特許EP4093894B1「Die cast aluminum alloys for structural components」(2024年10月9日成立)は、鋳造したあとの熱処理を、なくすために開発した合金だと説明しています。ただし、特許は「狙い」の説明で、実際の量産部品が、その合金かは、確認できていません。

第6話で、テスラは、車体の一部を、溶かしたアルミを型に流し込んで、大きな部品として作ると説明しました。この記事では、そこで使うアルミ合金が、普通のアルミと何が違うのかを、特許で確認しながら見ていきます。
結論:テスラの特許は、「熱処理をしなくても、強い合金」を狙っている
ダイカスト(高圧鋳造)は、溶かした金属を、高い圧力で、金型に注ぎ込んで、短い時間で、部品を作る方法です。複雑な形を、たくさん作るのに向いています(一般的な説明です)。
一般に、鋳造した部品を、強くするために、熱処理(部品を高温に熱してから、急に冷やすなど)をすることがあります。ただし、急に冷やすと、部品が、ゆがんだり、内部に、ひずみ(残留応力)が残ったりしやすい、と言われています(これも一般的な説明です)。部品が大きいほど、この問題は、大きくなりそうです。
テスラの特許EP4093894B1は、まさにそこを狙っています。
この特許の合金は、「鋳造した合金に、あとから熱処理をする必要を、なくす」ために、開発された。

構造部品向けの特許:EP4093894B1
Google Patentsで確認しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 番号・名称 | EP4093894B1「Die cast aluminum alloys for structural components」(構造部品のためのダイカスト用アルミ合金) |
| 出願人 | Tesla Inc |
| 成立日 | 2024年10月9日 |
| 優先日 | 2020年1月20日 |
| 状態(Google Patents) | 有効(Active)と表示。満了予定は2041年1月20日 |
| 注意点 | 2025年7月に、異議申立て(第三者が、成立に異議を唱える手続き)が、出されたと記録されている |
つまり、この特許は、成立していますが、成立後に、異議が出されています。結果は、この記事では、確認できていません。Google Patentsも、状態の表示は、「法的な結論ではなく、推定」と断っています。
混同しやすい特許:US11421304B2
アルミ合金について調べると、US11421304B2という特許が、ギガキャスティング用の合金として、紹介されていることがあります。この特許も、原文で確認しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 番号・名称 | US11421304B2「Casting aluminum alloys for high-performance applications」 |
| 出願人 | Tesla, Inc. |
| 成立日 | 2022年8月23日 |
| 優先日 | 2017年10月26日 |
| 要約の内容 | 降伏強度(変形し始める強さ)が120MPa超、電気伝導率が45%IACS超の、アルミ鋳造合金。用途は、ローター、ステーター、バスバー、インバーターなどの、自動車の電気部品 |
この特許の要約は、電気をよく通す合金の説明で、車体の構造部品向けとは、書かれていません。説明の中には、「この合金は、プレス冷却(急冷)ができて、追加の溶体化熱処理が、いらない」という趣旨の記述もありますが、ここでは、モーターなどの電気部品が、主な用途です。

確認できなかったこと
- 実際に、テスラの車体の鋳造部品が、これらの特許の合金かどうか(具体的な合金名や、成分は、公式資料で確認できませんでした)。
- 鋳造機のメーカーが、公表している、大型の鋳造機の詳しい情報(公式発表の原文は、確認できていません)。
- 熱処理を省いた部品の、強度や、寿命を、測定したデータ。
特許の書き方から、「大きな部品を、鋳造だけで、必要な強さにしたい」という狙いが、読み取れます。ただし、特許は、「こういう合金を、考えた」という書類です。実際の車に、どれくらい使われているのかは、別の話です。
よくある質問
ギガキャスティングのアルミ合金は、普通のアルミと何が違いますか?
テスラの特許EP4093894B1は、鋳造後の熱処理をなくすために開発した合金だと説明しています。実際の部品の合金は、確認できていません。
ギガキャスティング用の合金の特許は、成立していますか?
EP4093894B1が、2024年10月9日に成立しています(Google Patentsで有効と表示)。ただし、2025年7月に、異議申立てが出されたと記録されています。
US11421304B2も、ギガキャスティング用ですか?
特許の要約では、電気をよく通すアルミ鋳造合金で、ローターやステーターなどの電気部品が、用途として挙げられています。車体の構造部品向けとは、書かれていません。
熱処理をしないと、何がよいのですか?
一般的には、ゆがみや、ひずみが減り、工程が減る、と考えられます。テスラの特許が、その点を、狙っています。実際の効果の数字は、確認できていません。
まとめ
- ダイカストは、溶かしたアルミを、高い圧力で金型に注ぐ方法。大きな部品ほど、鋳造後の熱処理で、ゆがみやひずみが出やすい(一般的な説明)。
- テスラの特許EP4093894B1(2024年10月9日成立)は、鋳造後の熱処理を不要にする合金を説明する。ただし、2025年7月に異議申立てが出されている。
- US11421304B2は、電気をよく通す合金の特許で、車体用とは書かれていない。
- 実際の部品の合金名・成分、熱処理を省いた部品の測定データは、未確認。
次の記事:冬の充電に関わる、「オクトバルブ」の仕組みを、順番に見ていきます(準備中)。
出典(確認日 2026-10-15)
- 欧州特許 EP4093894B1「Die cast aluminum alloys for structural components」(Tesla Inc、2024年10月9日): https://patents.google.com/patent/EP4093894B1/en
- 米国特許 US11421304B2「Casting aluminum alloys for high-performance applications」(Tesla, Inc.、2022年8月23日): https://patents.google.com/patent/US11421304B2/en
この記事は、科学技術の学習を目的としたもので、投資の助言ではありません。事実と筆者の読み解きは、区別して書いています。図はAIで生成したイメージです。