テスラの普通充電(AC)と急速充電(DC)の違いとは?交流と直流の基礎から、充電にかかる時間の計算まで

確認日 2026年10月19日 / 読む時間 約10分

目次
  1. 前提知識1:交流(AC)と直流(DC)
  2. 前提知識2:kWとkWh、そして、V×A=W
  3. 結論:電池は直流。普通充電は、車の中で変換する
  4. Model 3のオンボードチャージャーの出力
  5. 計算してみよう:満タンまで、何時間?
  6. なぜ、急速充電(DC)は速いのか
  7. 使い分けの目安
  8. よくある質問
  9. まとめ
  10. 出典(確認日 2026-10-16)

家庭の電気は交流(AC)、電池にためる電気は直流(DC)です。普通充電では、車に積まれた「オンボードチャージャー」が、交流を直流に変えます。Model 3のオンボードチャージャーは、ロングレンジとパフォーマンスが11.5kW(48A)、後輪駆動が7.7kW(32A)で、これが家の充電の速さの上限になります。たとえば、60kWh分を空から満たすなら、11.5kWで約5.2時間、7.7kWで約7.8時間(損失を除いた計算)です。スーパーチャージャーは、変換を車の外の大きな充電器で行うため、その上限に縛られず、最大250kWで充電できます(すべての車が250kWで充電できるわけではありません)。

普通充電と急速充電の違いのイメージ。普通充電は、車の中の充電器でACをDCに変える。急速充電は、充電器の側で変える(AI生成のイメージ。概念図)
図1:普通充電と急速充電の違い(AI生成。概念図)。

第3部では、充電速度が変わる理由と、充電コネクターのNACSを見ました。この記事は、その手前の話です。「普通充電(AC)」と「急速充電(DC)」は、何が、どう違うのか。そして、自分の車を、家で満タンにするのに、何時間かかるのかを、自分で計算できるようになります。

前提知識1:交流(AC)と直流(DC)

電気は、導線の中を、電子が流れる現象です。その流れ方に、2種類あります。

  • 直流(DC): 電気が、いつも同じ向きに流れる。乾電池やスマホの電池が、この種類です。プラスからマイナスへ、ずっと一方向です。
  • 交流(AC): 電気の向きが、周期的に、行ったり来たりする。家庭のコンセントが、この種類です。日本では、1秒間に50回(東日本)または60回(西日本)、向きが入れ替わります(この回数を「周波数」と呼び、単位はHz)。

では、なぜ、家庭には、交流が届くのでしょうか。発電所から家までは、とても長い距離です。電気を遠くへ送るとき、電圧を高くして送ると、途中で失われる電気が少ないことが知られています。そして、交流は、電圧を上げ下げするのが簡単(変圧器という、鉄心とコイルの装置で、できる)なのです。この性質のために、世の中の送電は、交流が主流になりました。

一方、電池は、直流しかためられません。電池の中では、プラス側とマイナス側の材料の間で、イオンが移動して、エネルギーが化学的にたまります。この動きは、一方向の電気の流れに対応しているので、向きが入れ替わる交流は、そのままでは、電池にためられないのです。

つまり、家のコンセント(交流)から、電池(直流)へ電気を移すには、どこかで、交流を直流に変える装置が必要です。この変換が、充電の話の中心です。

前提知識2:kWとkWh、そして、V×A=W

充電の話には、似た単位が出てきます。ここで、整理します。

単位意味たとえ
kW(キロワット)電力。1秒あたりに、どれだけの電気を使う(送る)か。「速さ」蛇口から出る水の勢い
kWh(キロワット時)電力量。電気の「量」。1kWの電力を、1時間使った量が、1kWhバケツにたまった水の量

そして、電力は、電圧(V、ボルト)× 電流(A、アンペア)で決まります。

  • 電圧(V): 電気を押し出す「力」。水でいえば、水圧。
  • 電流(A): 流れる電気の「多さ」。水でいえば、水量。
  • 電力(W) = 電圧(V) × 電流(A)。1000Wが、1kW。

日本の家庭のコンセントは、100Vです。上限が15Aなら、100 × 15 = 1500W = 1.5kW。これが、ふつうのコンセントで出せる、最大のめやすです。

結論:電池は直流。普通充電は、車の中で変換する

テスラのサポートページ「Onboard Charger」には、次のように書かれています(要約)。

  • ウォールコネクター(壁に取り付ける充電器)やモバイルコネクター(持ち運べる充電ケーブル)は、車に交流(AC)の電気を送る。
  • 電池は、直流(DC)でエネルギーをためる。
  • 車に積まれたオンボードチャージャーが、ACをDCに変えて、電池にためられるようにする。

つまり、普通充電では、変換する装置が、車の中にあります。この装置の大きさ(出力)が、家の充電の速さの上限を決めます。ウォールコネクター自体は、交流を車に渡すだけの、「安全なコンセント」のような役目です。

Model 3のオンボードチャージャーの出力

サポートページの表には、次のように書かれています。

車種・グレードオンボードチャージャー推奨の回路ブレーカー(ウォールコネクター用)
Model 3 ロングレンジ11.5 kW(48A)60A
Model 3 パフォーマンス11.5 kW(48A)60A
Model 3 後輪駆動7.7 kW(32A)40A
  • 画面の稲妻のアイコンを押すと、お持ちの車の最大のアンペアを確認できる、と書かれています。
  • テスラは、家にウォールコネクターを付け、モバイルコネクターは、出先のための予備として、トランクに入れておくことを勧めています。

この表の数字は、先ほどの「V×A=W」で読めます。11.5kW ÷ 48A ≒ 240V、7.7kW ÷ 32A ≒ 240V。つまり、北米の家庭用の、240Vの電源を前提にした数字です。ブレーカーが、出力の電流(48A、32A)より大きい(60A、40A)のは、電気を長時間流し続けるので、電流の上限の、約8割に収めるための余裕、という考え方です(この「8割」は、北米の電気工事の一般的な慣習で、公式ページの文面ではありません)。

オンボードチャージャーの出力の違いのイメージ。11.5kWと7.7kW(AI生成のイメージ。サポートページの表をもとにした概念図)
図2:Model 3のオンボードチャージャーの出力(AI生成。概念図)。

計算してみよう:満タンまで、何時間?

時間 = 電力量(kWh) ÷ 電力(kW)。これだけです。

たとえば、60kWh分の電気を、空の状態から入れるとします(電池の大きさは、車種で違うので、ここでは、計算の練習用の仮の数字です)。

  • 11.5kWのオンボードチャージャー: 60 ÷ 11.5 ≒ 5.2時間
  • 7.7kWのオンボードチャージャー: 60 ÷ 7.7 ≒ 7.8時間
  • 日本の100Vコンセント(1.5kW): 60 ÷ 1.5 = 40時間

実際は、変換のときに、熱として失われる電気があるので、もう少し長くかかります。それでも、夜に寝ている間(8〜10時間)に、普通充電で満タンに近づく、という使い方が、成り立つ理由が、この計算でわかります。逆に、100Vコンセントだけでは、1晩に、約12〜15kWh(1.5kW × 8〜10時間)しか入りません。毎日の通勤で使う電気の量を、まかなえるかどうかが、目安になります。

なぜ、急速充電(DC)は速いのか

車の中の変換装置(オンボードチャージャー)は、車に積むので、大きさ、重さ、値段に、限りがあります。11.5kWが、その現実的な大きさの、ひとつの例です。

一方、スーパーチャージャーは、車の外にある、大きな専用の充電器です。交流を直流に変える装置を、充電器の側に置きます(この点は、直流の急速充電の、一般的なしくみの説明です。テスラの公式ページには、変換の場所は、はっきりと書かれていません)。そして、できた直流を、車の電池に、ほぼ直接送ります。車の中の小さな変換装置を通らないので、その上限に縛られません。

テスラのサポートページ「Supercharging」には、次のように書かれています(要約)。

  • スーパーチャージャーは、長距離の移動に最適で、車をすばやく充電する。毎日の通勤や近場には、家の充電が向いている。
  • 充電の速さは、電池の大きさや古さ、充電率、気温、車の仕様などで変わる。
  • Model 3は、15分で、最大175マイル(テスラの記載。約280km)。Model Yは162マイル、Model Sは200マイル。
  • V3スーパーチャージャーの最大は250kW。ただし、すべての車が250kWで充電できるわけではない。
  • 充電が進むと、速さは遅くなる。100%まで充電するのは、80%までより、かなり長くかかるのが、ふつう。
  • 混雑するサイトでは、充電の上限が自動で80%に調整されることがある(手動で上げられる)。
  • 期待より遅いとき:車と充電器が、速さを相談して決める。電池の充電率、電池の温度、そのサイトの使用状況、極端な気候で、速さが変わる。

250kWと11.5kWを比べると、約22倍です。11.5kWで5.2時間かかる量(60kWh)を、仮に250kWで入れ続けられるなら、約14分です。ただし、実際は、充電が進むと速さが落ちるので、ずっと250kWは、続きません。なぜ落ちるのかは、充電速度が変わる理由で、くわしく見ています。

スーパーチャージャーの速さが変わる要因のイメージ。電池の大きさ、充電率、気温、車の仕様(AI生成のイメージ。サポートページの記述をもとにした概念図)
図3:急速充電の速さを左右するもの(AI生成。概念図)。

使い分けの目安

場面向いている充電理由
毎日の通勤、近場家の普通充電(AC)夜の間に、ゆっくり満たせる。テスラも、家の充電を勧めている
長距離の移動スーパーチャージャー(DC)休憩の15〜30分で、大きく回復できる
出先で、急に足りなくなったモバイルコネクター(AC)、またはスーパーチャージャー予備として、トランクに入れておく

よくある質問

普通充電(AC)と急速充電(DC)の違いは?

どこで、交流を直流に変えるかです。普通充電は、車の中のオンボードチャージャーが変えるので、車の装置の大きさが、速さの上限になります。急速充電は、車の外の大きな充電器が変えて、直流を直接送るので、速く充電できます。

kWとkWhは、どう違いますか?

kWは、電気の「速さ(電力)」、kWhは、電気の「量(電力量)」です。「1kWの電力を、1時間使った量」が、1kWhです。

家のコンセント(100V)で、充電できますか?

電気的には可能ですが、1.5kW程度(100V、15Aのとき)なので、とても遅くなります。計算では、60kWhを入れるのに、約40時間です。毎日使うなら、家に専用の充電器(ウォールコネクター)を付ける、とテスラは勧めています。

オンボードチャージャーとは?

車に積まれた充電器で、家庭などから来る交流(AC)の電気を、電池にためる直流(DC)に変えます(テスラ公式サポート)。

スーパーチャージャーは、いつも最大の速さで充電できますか?

できません。電池の充電率、温度、そのサイトの使用状況、気候などで変わり、充電が進むと遅くなります(テスラ公式サポート)。

100%まで、急速充電したほうがいいですか?

テスラは、100%まで充電するのは、80%までより、かなり長くかかると書いています。長距離のときは、次のスーパーチャージャーまでの必要な量を、車のナビが提案します。

まとめ

  • 電池は直流(DC)しかためられず、家庭の電気は交流(AC)。どこかで変換が必要。
  • kW=速さ、kWh=量。電力(W)=電圧(V)×電流(A)。時間=kWh÷kWで、充電時間を計算できる。
  • 普通充電では、車の中のオンボードチャージャーが変換する。Model 3は、ロングレンジとパフォーマンスが11.5kW(48A)、後輪駆動が7.7kW(32A)(テスラ公式)。
  • スーパーチャージャーは、車の外の大きな充電器が変換するので、最大250kW(すべての車ではない)。充電が進むと、速さは落ちる。
  • 毎日は家の普通充電、長距離はスーパーチャージャー、が基本の使い分け。

つづきの問い: 充電が進むと、なぜ速さが落ちるのでしょうか。それは、充電速度が変わる理由の記事で、電池の中の様子から見ていきます。

出典(確認日 2026-10-16)

この記事は、科学技術の学習を目的としたもので、投資の助言ではありません。公式の記述と一般的な説明は、区別して書いています(「一般的な説明」と書いた部分は、公式ページの文面ではありません)。図はAIで生成したイメージです。

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