テスラのオクトバルブとは?冷却液の流れを切り替える8ポートのバルブを、特許で確認しながら図解

確認日 2026年10月15日 / 読む時間 約8分

目次
  1. 結論:オクトバルブは、「冷却液の道すじ」を切り替える、8ポートのバルブ
  2. 何をつなぐのか
  3. つなぎ方の例(特許の記述から)
  4. 特許で確認したこと
  5. 実際の車では:2020年の分解報道
  6. 確認できなかったこと
  7. よくある質問
  8. まとめ
  9. 出典(確認日 2026-10-15)

オクトバルブとは、テスラの特許が「8つのポートをもつバルブ」と定義している、冷却液の切り替え弁です。バッテリー、駆動ユニット、ラジエーター、チラーなどをつなぐ道すじを、バルブの中の回転する部品で切り替えます。特許US11932078B2(2024年3月19日成立)に、この定義があります。ただし、実際の車での全体の動作や、効率の数字は、テスラの公式資料では確認できていません。

オクトバルブのイメージ。8つのポートをもつバルブが、バッテリー、駆動ユニット、ラジエーター、チラーなどの冷却液の道すじを、切り替えてつなぐ(AI生成のイメージ。概念図)
図1:オクトバルブのイメージ(AI生成。概念図で、実際の形とは異なります)。

以前の記事熱の流れで、車の中の熱が、どう流れるかを説明しました。この記事では、その熱の流れを切り替える部品、オクトバルブを、特許で確認しながら見ていきます。

結論:オクトバルブは、「冷却液の道すじ」を切り替える、8ポートのバルブ

テスラの特許US11932078B2は、こう書いています。

特許の記述(原文を短く引用)

「the valve includes 8 ports and is referred to as an octovalve」

(そのバルブは、8つのポートをもち、オクトバルブと呼ばれる。)

「オクト(octo)」は、「8」を表す言葉です。ポートとは、冷却液の出入り口のことです。

この特許によると、バルブには、ケースと、その中で回る部品(ステムシェル)があります。ステムシェルには、ポート同士をつなぐ溝があり、回すと、どのポートがつながるかが変わります。

何をつなぐのか

特許の説明では、オクトバルブは、次のような部品につなげられます。

  • バッテリー(行きと戻り)
  • 駆動ユニット(モーターなどを冷やす回路、ポンプ)
  • 液冷コンデンサー(LCC)(冷媒の熱を、冷却液に渡す部品)
  • ラジエーター(外の空気と熱をやりとりする部品)
  • チラー(冷媒と冷却液の間で、熱をやりとりする部品)

これらのつなぎ方を変えて、使い分けます。

オクトバルブでつなぐ部品。バッテリー、駆動ユニット、液冷コンデンサー、ラジエーター、チラー(AI生成のイメージ。特許の記述をもとにした概念図)
図2:オクトバルブがつなぐ部品(AI生成。特許の記述をもとにした概念図)。

つなぎ方の例(特許の記述から)

特許US12365215B2(同じ家族の特許)には、いくつかの「モード」が説明されています。

モード内容(特許の記述の言い換え)
全部を直列につなぐバッテリー、駆動ユニット、LCC、ラジエーター、チラーを、1つの輪にする
外の空気を熱源にするラジエーターで、外の空気の熱を、チラーに集め、LCCで冷却液を温めて、バッテリーに使う
ラジエーターを通らないラジエーターの入口と出口を直接つなぎ、ほとんど流さない
並列にするラジエーターと駆動ユニット、バッテリーとチラーを、別々の輪にする
バッテリーの流れを逆にする充電中などに、流れる向きを変えて、セルの温度のムラを減らす

また、特許は、バッテリーを温めることについて、充電の前の準備や、寒くて航続距離が下がるときに、使えると説明しています。

つなぎ方の例。直列、並列、ラジエーターを通らない、のイメージ(AI生成のイメージ。特許の記述をもとにした概念図)
図3:つなぎ方の例(AI生成。特許の記述をもとにした概念図で、実際の配管とは異なります)。

特許で確認したこと

Google Patentsで確認しました。状態の表示は、「法的な結論ではなく、推定」と断られています。

番号名称日付状態
US10967702B2(公開番号 US20190070924A1)Optimal source electric vehicle heat pump with extreme temperature heating capability and efficient thermal preconditioning優先日2017年9月7日、2021年4月6日成立有効(Active)
US11932078B2Electric vehicle heat pump using enhanced valve unit優先日2021年3月31日、2024年3月19日成立有効(Active)
US12365215B2(上の続きの特許)同上2025年7月22日成立有効(Active)
  • 3つとも、出願人はTesla Incです。
  • 「オクトバルブ(octovalve)」という言葉が定義されているのは、US11932078B2とUS12365215B2です。
  • 古いUS10967702B2は、「8-way valve(8方向の弁)」と書いていて、「octovalve」という言葉は、確認した範囲では、出てきませんでした。ただし、読めたのは一部です。

実際の車では:2020年の分解報道

報道(Jalopnik、2020年5月8日、David Tracy記者)は、自動車の分解調査会社Munro & Associatesが、Model Yを分解した情報として、オクトバルブを紹介しています。それによると、

  • バルブは、ナイロン製の冷却液のマニホールド(流路をまとめた部品)の、くぼみに入っている。
  • 4つの位置を切り替える電動のステッピングモーターで動く。
  • 冷却液を、モーター、バッテリー、パワーエレクトロニクスなどに送り分ける。
  • 隣に、電動のウォーターポンプが2つある。

ただし、これは第三者の分解の報道です。テスラ自身が、この車の構造を、公式の資料で説明したものではありません。

確認できなかったこと

  • テスラの公式資料(取扱説明書、整備資料、公式ブログ)で、「オクトバルブ」の名前や、構造が説明されているか。
  • Model 3、Cybertruckなど、他の車種への採用状況(公式資料では、確認できていません)。
  • オクトバルブのおかげで、効率や航続距離が、どれだけ良くなったかの、公式の数字。
  • 特許の使い方が、実際の車で、どのモードがどのくらい使われているか。
筆者の読み解き(確認した事実ではありません)

特許の書き方から、「バッテリー、駆動ユニット、ラジエーターなどの回路を、1つのバルブで、つなぎ替えることで、熱を使い回したい」という狙いは、読み取れます。ただし、特許は「こういう仕組みを考えた」という書類で、実際の車の動きとは、別の話です。

よくある質問

オクトバルブとは、何ですか?

テスラの特許が、「8つのポートをもつバルブ」と定義している、冷却液の切り替え弁です。ステムシェルを回して、つながるポートを変えます。

オクトバルブは、何をつなぎますか?

特許の説明では、バッテリー、駆動ユニット、液冷コンデンサー、ラジエーター、チラーなどです。

オクトバルブは、冬の航続距離を良くしますか?

特許は、バッテリーを温める用途を説明していますが、航続距離がどれだけ良くなるかの、公式の数字は、確認できていません。

どの車に使われていますか?

2020年のModel Yの分解報道があります(Jalopnik)。他の車種は、公式資料で確認できていません。

まとめ

  • オクトバルブは、特許US11932078B2(2024年3月19日成立)が、「8つのポートをもつバルブ」と定義した、冷却液の切り替え弁。
  • バッテリー、駆動ユニット、LCC、ラジエーター、チラーなどを、直列・並列などに、つなぎ替える(特許の記述)。
  • 2020年のModel Yの分解報道が、4位置のステッピングモーターで動くバルブを伝えている。ただし、第三者の報道。
  • テスラの公式資料での説明、他の車種への採用、効率の数字は、未確認。

次の記事:冬の寒さで、電池がどう変わるのかと、そのための「予熱」を、順番に見ていきます(準備中)。

出典(確認日 2026-10-15)

この記事は、科学技術の学習を目的としたもので、投資の助言ではありません。事実と筆者の読み解きは、区別して書いています。図はAIで生成したイメージです。