オクトバルブとは、テスラの特許が「8つのポートをもつバルブ」と定義している、冷却液の切り替え弁です。バッテリー、駆動ユニット、ラジエーター、チラーなどをつなぐ道すじを、バルブの中の回転する部品で切り替えます。特許US11932078B2(2024年3月19日成立)に、この定義があります。ただし、実際の車での全体の動作や、効率の数字は、テスラの公式資料では確認できていません。

以前の記事熱の流れで、車の中の熱が、どう流れるかを説明しました。この記事では、その熱の流れを切り替える部品、オクトバルブを、特許で確認しながら見ていきます。
結論:オクトバルブは、「冷却液の道すじ」を切り替える、8ポートのバルブ
テスラの特許US11932078B2は、こう書いています。
「the valve includes 8 ports and is referred to as an octovalve」
(そのバルブは、8つのポートをもち、オクトバルブと呼ばれる。)
「オクト(octo)」は、「8」を表す言葉です。ポートとは、冷却液の出入り口のことです。
この特許によると、バルブには、ケースと、その中で回る部品(ステムシェル)があります。ステムシェルには、ポート同士をつなぐ溝があり、回すと、どのポートがつながるかが変わります。
何をつなぐのか
特許の説明では、オクトバルブは、次のような部品につなげられます。
- バッテリー(行きと戻り)
- 駆動ユニット(モーターなどを冷やす回路、ポンプ)
- 液冷コンデンサー(LCC)(冷媒の熱を、冷却液に渡す部品)
- ラジエーター(外の空気と熱をやりとりする部品)
- チラー(冷媒と冷却液の間で、熱をやりとりする部品)
これらのつなぎ方を変えて、使い分けます。

つなぎ方の例(特許の記述から)
特許US12365215B2(同じ家族の特許)には、いくつかの「モード」が説明されています。
| モード | 内容(特許の記述の言い換え) |
|---|---|
| 全部を直列につなぐ | バッテリー、駆動ユニット、LCC、ラジエーター、チラーを、1つの輪にする |
| 外の空気を熱源にする | ラジエーターで、外の空気の熱を、チラーに集め、LCCで冷却液を温めて、バッテリーに使う |
| ラジエーターを通らない | ラジエーターの入口と出口を直接つなぎ、ほとんど流さない |
| 並列にする | ラジエーターと駆動ユニット、バッテリーとチラーを、別々の輪にする |
| バッテリーの流れを逆にする | 充電中などに、流れる向きを変えて、セルの温度のムラを減らす |
また、特許は、バッテリーを温めることについて、充電の前の準備や、寒くて航続距離が下がるときに、使えると説明しています。

特許で確認したこと
Google Patentsで確認しました。状態の表示は、「法的な結論ではなく、推定」と断られています。
| 番号 | 名称 | 日付 | 状態 |
|---|---|---|---|
| US10967702B2(公開番号 US20190070924A1) | Optimal source electric vehicle heat pump with extreme temperature heating capability and efficient thermal preconditioning | 優先日2017年9月7日、2021年4月6日成立 | 有効(Active) |
| US11932078B2 | Electric vehicle heat pump using enhanced valve unit | 優先日2021年3月31日、2024年3月19日成立 | 有効(Active) |
| US12365215B2(上の続きの特許) | 同上 | 2025年7月22日成立 | 有効(Active) |
- 3つとも、出願人はTesla Incです。
- 「オクトバルブ(octovalve)」という言葉が定義されているのは、US11932078B2とUS12365215B2です。
- 古いUS10967702B2は、「8-way valve(8方向の弁)」と書いていて、「octovalve」という言葉は、確認した範囲では、出てきませんでした。ただし、読めたのは一部です。
実際の車では:2020年の分解報道
報道(Jalopnik、2020年5月8日、David Tracy記者)は、自動車の分解調査会社Munro & Associatesが、Model Yを分解した情報として、オクトバルブを紹介しています。それによると、
- バルブは、ナイロン製の冷却液のマニホールド(流路をまとめた部品)の、くぼみに入っている。
- 4つの位置を切り替える電動のステッピングモーターで動く。
- 冷却液を、モーター、バッテリー、パワーエレクトロニクスなどに送り分ける。
- 隣に、電動のウォーターポンプが2つある。
ただし、これは第三者の分解の報道です。テスラ自身が、この車の構造を、公式の資料で説明したものではありません。
確認できなかったこと
- テスラの公式資料(取扱説明書、整備資料、公式ブログ)で、「オクトバルブ」の名前や、構造が説明されているか。
- Model 3、Cybertruckなど、他の車種への採用状況(公式資料では、確認できていません)。
- オクトバルブのおかげで、効率や航続距離が、どれだけ良くなったかの、公式の数字。
- 特許の使い方が、実際の車で、どのモードがどのくらい使われているか。
特許の書き方から、「バッテリー、駆動ユニット、ラジエーターなどの回路を、1つのバルブで、つなぎ替えることで、熱を使い回したい」という狙いは、読み取れます。ただし、特許は「こういう仕組みを考えた」という書類で、実際の車の動きとは、別の話です。
よくある質問
オクトバルブとは、何ですか?
テスラの特許が、「8つのポートをもつバルブ」と定義している、冷却液の切り替え弁です。ステムシェルを回して、つながるポートを変えます。
オクトバルブは、何をつなぎますか?
特許の説明では、バッテリー、駆動ユニット、液冷コンデンサー、ラジエーター、チラーなどです。
オクトバルブは、冬の航続距離を良くしますか?
特許は、バッテリーを温める用途を説明していますが、航続距離がどれだけ良くなるかの、公式の数字は、確認できていません。
どの車に使われていますか?
2020年のModel Yの分解報道があります(Jalopnik)。他の車種は、公式資料で確認できていません。
まとめ
- オクトバルブは、特許US11932078B2(2024年3月19日成立)が、「8つのポートをもつバルブ」と定義した、冷却液の切り替え弁。
- バッテリー、駆動ユニット、LCC、ラジエーター、チラーなどを、直列・並列などに、つなぎ替える(特許の記述)。
- 2020年のModel Yの分解報道が、4位置のステッピングモーターで動くバルブを伝えている。ただし、第三者の報道。
- テスラの公式資料での説明、他の車種への採用、効率の数字は、未確認。
次の記事:冬の寒さで、電池がどう変わるのかと、そのための「予熱」を、順番に見ていきます(準備中)。
出典(確認日 2026-10-15)
- 米国特許 US11932078B2「Electric vehicle heat pump using enhanced valve unit」(Tesla Inc、2024年3月19日): https://patents.google.com/patent/US11932078B2/en
- 米国特許 US12365215B2(同上の続き、2025年7月22日): https://patents.google.com/patent/US12365215B2/en
- 米国特許 US10967702B2(公開番号US20190070924A1、Tesla Inc、2021年4月6日): https://patents.google.com/patent/US20190070924A1/en
- Jalopnik(2020年5月8日、David Tracy)「The Tesla Model Y's Octovalve And Cooling System Manifolds Are Simply Amazing」: https://jalopnik.com/the-tesla-model-ys-octovalve-and-cooling-system-manifol-1843342722
この記事は、科学技術の学習を目的としたもので、投資の助言ではありません。事実と筆者の読み解きは、区別して書いています。図はAIで生成したイメージです。